『あなたへ』をあなたへ

 オバサン、オッサンばかりかと思ったら、そうでもなかった。ーーなるほど、水曜日は女性割引デーなのか。そのせいか、若い女性の姿もちらほら。
 映画館のことである。しかし、あらゆるところで何かと女性が優遇されてはいまいか? 気のせいか? ……まあいいか。男女平等社会のハズ、なんだがなぁ。
 首都圏の電車には「女性専用車両」があったり、JRの特急には「女性専用シート」があったり、何かと男女を分ける社会である。
 もちろん性別できっちり分けなければいけないところもあるが、考えてみればおかしな社会である。
 いけね、こういう方面の論考をするつもりではないのだった。ーー映画の話しだった。
 で、『あなたへ』を観てきたのである。高倉健が6年ぶりで主演した最新作である。『単騎千里を走る』以来だそうである。
 そういえばずいぶんお年を召されたようだ。刑務官を定年後嘱託で勤務している、という役の設定にはちょっとついて行けていない。若々しい(というか年相応の)田中裕子との夫婦もなんだか違和感がある。
 でも、共演陣は多彩だ。ビートたけしはヘタクソだったが、草薙剛が出色であった。ほかに、佐藤浩市余貴美子長塚京三など芸達者をそろえていたが、やはり高倉健の存在感は圧倒的である。
 つまり、監督・降旗康男との名コンビが観客の期待を裏切らない、安心して観られる絵をとどけてくれた作品、といえるのだろう。
 惜しむらくは、もう少し脚本を練りあげてほしかった。妻(田中裕子)の背景がよくわからないままにラストまでひっぱられ、消化不良のまま放り出された感じはする。
 しかし、田中裕子の、観る者の感情をさっと引き寄せてしまう演技、というか天性のものかと思われる魅力には感心させられる。そういえば、大滝秀治もさすがだったなぁ。
 そんなこんなの『あなたへ』は、観てがっかり、という映画ではもちろんない。ただやはり、高倉健の6年間のブランクはもったいなかったなぁ、という気がしてならない。(^^ゞ
(photo:中国、南京城にて)