ワリ食う人々

 「失われた10年」が、いつのまにか「失われた20年」といわれるようになってしまった。これは、バブル崩壊後の日本経済の低迷期をあらわす表現である。
 元々バブルは作り出された幻のようなものだし、それ以前の高度成長期にしても、なにも日本のしっかりした経済政策があったわけでもなく、アメリカの意向による、いわば「成行」にすぎなかったともいえる。
 しかし、日本の発展は世界中で成功神話となり、経済大国として評価されるようになった。もちろん、世界に誇る技術や製品をたくさん輩出してきたが、それは政府の施策がとくべつ優れていたわけではなかった。
 つまり、あいかわらず政治は二流のままなのである。なんとなく平和でうまくいっているように見えたこの国は、じつは誰も舵取りをしていなかったのである。
 そのことが、去年の震災や原発事故で明らかになった。そして、さすがにこれはマズイ、と女たちや若者たちが行動を起こすようになったのである。
 触角が鈍磨しているサラリーマンやオッサンたちより、女たちはさすがに敏感である。時代のしわ寄せでワリを食っている若者たちも声を上げはじめている。
 無関係をよそおい涼しい顔をしようが、結局はこの国の老若男女すべてに降りそそぐ問題はどこまでも追いかけてくる。
 先日、僕の少し年長の友人がネパールへ旅立っていった。仕事をするためである。
 知らない土地ではないにしろ、一人身の彼にとって、請われた3年間はなかば背水の陣の決断を迫られたことだろう。
 若者でさえ職にあぶれるこの国で、初老の男は有能であっても、その能力を活かせる職につくことはむずかしい。
 友人の健康と平穏を願うばかりである。(O_O)
(photo:ミヤマトリカブト? トリカブトは種類が多い。西穂高にて)