命名はむずかしい

 アルバート、ベリル、クリス、デビー、アーネスト……。もちろん英語圏の人の名前だが、じつは今年の大西洋北部のハリケーン命名リストである。
 ずっと以前は女性の名前だけだったらしいが、男女同権の世の中、当然のように今では男女交互になっているようである。それでも人の名前でいくのかと思うと、なかなかすごい。
 2005年のハリケーンカトリーナは日本でも大きく報道された。北アメリカ全土のカトリーナさんはさぞ落ち着かなかったことだろう。
 さて日本はというと、おなじみの無味乾燥な通し番号である。今年は11号まで進んでいる。
 ハリケーンのように名前をつけるという発想は、我が民族になじまないとは思うが、番号だけではいつの年のものかわからない。伊勢湾台風室戸台風、といった通称を持っているものもあるが、是非はべつとしてとてもわかりやすい。
 ーー台風ユキオは急激に発達したけれど、迷走の末消滅。台風イチロウは勢力を弱めてまもなく温帯低気圧に。台風ヨシヒコは列島を縦断して各地に大きな被害をあたえている。
 台風ヨシヒコは全国で大ひんしゅくを買うが、全国のヨシヒコさんはずいぶん肩身がせまいことだろう。国民は、早く消滅してくれることを願うばかりだ。
 などということになりかねない。
 最近の子どもの名前には、一見して読めない名前が少なくない。あるいは読めるけど、ホント? というタイプもある。たとえば「典史」。訓読みすれば「ノリフミ」だが、音読みして「テンシ」だそうである。「紗音瑠」はどうかというと、こちらは「シャネル」。
 ーーテンシは◯◯に上陸して大暴れ。シャネルは勢力を拡大してさらに北上中。
 なんていうことになると、いささか具合が悪い。意味がちょっとちがってきたりする。
 災害つづきの昨今の我が国ではあるが、台風シーズンは穏便に過ぎ去ってくれれば、と願うばかりである。
 あ〜、今日は「トレイシー」のことを書くつもりだった。台風の名前から脱線してしまった。(;_;)
(photo:立山、弥陀ヶ原にて)