ビール党の矜持

 ビールを買いに行くと、最近では発泡酒や第3のビールの種類があまりに多くて、またそれらがあたかもビールのような顔をして並んでいるので、うっかり手を出してしまうことがある。
 相対的にビールの占めるシェアが落ちているので、ビールもなんだか肩身がせまい思いをしてショーケースに並んでいるようだ。
 資源ゴミ回収の日を観察しても、アルミ缶は圧倒的にビール以外のものが多く、スーパーのショーケースの現状を確実に反映している。
 そんななかに、ビールの空缶ばかりをガラガラ投入する瞬間はいささか肩身がせまい。小心な僕は、当番の人々の視線に耐えながら、朝からタラリと汗が流れるのである。
 しかし考えてみると、何も恥じることはないのである。世の中の消費性向が変化しただけであって、僕は変わっていないのである。
 浴びるほどビールを飲んでいるわけではなく、以前より消費量が増えたわけでもなく、平均的な消費量を淡々と飲みつづけているだけである。
 それができれば苦労はない、といわれそうだが、消費性向の裏には構造的な問題があるので、それは政治経済の話しである。
 ところで近ごろは、ショーケースに台頭してきた新勢力がやたらに目につく。ビールでも発泡酒でも第3のビールでもない。“ビールテイスト” の清涼飲料である。いわゆるノンアルコールビールである。
 こちらも百花繚乱。黒いビールならぬ黒い飲料も出ているから恐れ入る。日本のメーカーの新製品開発力はたいしたものである。
 しかし、こんなことに血道をあげていていいものか、とビール党の男は思う。邪道ではないか、といえばいいすぎかもしれないが、本道のビールできっちり勝負をしてもらいたい、と思う。
 ついでにいえば、ノンアルコールのあれらはみんな失格である。お金を出すに値しない。“ビールテイスト” がきいてあきれる。ビールではないのはもちろんだが、代用にさえならない。メーカーはもっと時間とお金をかけて研究してほしい。食品添加物でごまかすのは問題外の外である。
 今夏は猛暑がつづき、ビール好きには絶好の日々ではある。まあしかしとりあえず、うまいビールが飲めるだけで感謝である。(^_^;
(photo:手取峡谷、綿ヶ滝。昼間の逆光、撮影条件最悪)