イチローと大リーグ

 ヤンキースのユニフォームを着たイチローにはびっくりした。今シーズンは成績が低迷していたし、契約最後の年だったから何かあるな、とは思っていたのだが。
 それにしても一旦まとまると事がスムーズだ。というか、大リーグのドラスチックな運営を垣間見た思いだ。
 イチローの決断について日本ではいろいろ取りざたされ、あまつさえサラリーマン社会に引きあてるような論調も目につく。
 しかし、人生を何度もおくれる資産を保有しているイチローと一般サラリーマンとを同列視しても意味がない、という意見には(これはやくみつる氏のコメントの要旨だが)まったく同感である。
 イチローは別世界の人間である。大リーグというエンターテインメントの世界で、選ばれた人たちが演ずる特別な舞台に生きる人なのである。
 自分で自分のことを決断するのは意外とむずかしいものである。とくに少しでも迷いがある場合はなおさらだ。そんなとき誰かが背中を押してくれれば、案外かんたんに踏み出せたりするものだ。
 これが組織となるとまたむずかしいのだが、先日のプロ野球選手会WBC不参加表明もなかなかの決断だった。
 そもそもWBCは、アメリカの利益のためにおこなわれている。大リーグ発展のための興行であり、アメリカの金儲けのためのしかけであり、野球王国の威信を見せつけるためのイベントである。
 だいたいWBCのW(ワールド)は片腹痛い。世界的にみればマイナーなスポーツにすぎない野球の、世界一といわれてもなんだかな、という気はする。
 大リーグの「ワールドシリーズ」も同様である。あちらのほうがさらに違和感がある。さすがアメリカの “オレ様主義” である。
 野球はすばらしいスポーツだとは思うが、アメリカが他国の野球を二流(もしくは下請け組織)としてみている限りは、なかなか普及しないと思う。
 プロ野球選手会の決断は評価してもいいが、旧態依然とした球団側の思惑とはズレがあるから今後の成り行きに注目である。
 ま、とにかくイチローの活躍が楽しみである。(O_O)
(photo:立山浄土山から別山、左背後に剣岳