再起第1戦

 振りかえれば2009年9月、福井の日野山へ登ったきり山へ行っていなかった。中国へ行っていた、という事情もあるが、ほぼ3年ぶりの山だった。
 今日、梅雨の晴れ間を利用して、北飛彈の籾糠山へ行ってきた。
 マイカーを運転して、北陸自動車道から東海北陸自動車道に入り、白川郷インターで下りる。すぐに飛彈古川に抜ける国道360号線に入って約20分、標高1,290mの天生峠に到着する。
 ここには大きな駐車場と、天生県立自然公園を管理する公園協議会の臨時事務局がある。環境保護のための協力金(一人500円)を納めて歩き出す。
 50代も中盤になってからのブランク3年間は少し不安だった。いちばんの心配は、体力の低下である。とくに心肺機能と足腰の衰えである。
 恐るおそる歩きはじめた。久しぶりの森の空気と匂いは、自分のそんな不安を一掃してくれたかのようだった。しかしやはり身体は正直だった。これまでの山歩きの感覚にくらべると、微妙なズレを意識しはじめていた。
 それは、ブランクが招いた身体的なとまどいと、山を歩く勘どころの鈍磨とでもいうようなものだろうか。しかし山の空気に慣れるにしたがい、それも徐々に解消していったのだが、体力の衰えは認めざるをえなかった。
 籾糠山へ至るルートには天生湿原、カラ谷原生林、木平湿原といった見どころが多く、初夏のこの時期にはニッコウキスゲワタスゲゴゼンタチバナツマトリソウなどの花々が目を楽しませてくれる。この地域はブナ林も見事で、しばし立ち止まって息をととのえると森の静寂が心地よい。
 登山口から約3時間、あえぎながら最後の急登を克服すると、籾糠山のせまい頂上に飛び出る。標高1,744mのここからはほぼ360度の展望が得られる。条件がよければ北アルプスの山々が間近に望めるのだが、午後に入った時間帯ではそれは少し無理な注文だった。
 梅雨の長雨でぬかるんだ道を下りながら、再起第1戦の手応えを考えていた。まずまずの感触だったが、北アルプス復帰までにはまだまだ調整が必要だろう。希望は見えたが、課題もたくさんかかえた今日のワンデイ山行だった。
 平日にもかかわらず、山は中高年登山者でにぎわっていた。多少距離があり時間もかかる籾糠山の頂上までやってくる人たちは少なかったが、あいかわらず山の世界でも中高年パワーは健在である。(O_O)
(photo:籾糠山、木平湿原)