唐突に、ブームについて

 ティンバーランドというアメリカの靴メーカーがある。数年前から、日本の男子高校生の間では人気のブランドである。
 しかし、彼らが好んで履くのはどうも特定のモデルのようである。それがまたさほど安くもない。
 クソ暑い夏場でも、その黄土色の革ブーツを履いている連中をよく見かける。見ているだけでこちらの足まで蒸れてきそうだが、このブームの仕掛け人にはまったく感心する。
 集団心理というか、人と同じことをしたい気持ちと、人とちがうことをしたくない、という気持ちがブームをつくっているのだろう。あの年ごろではそんな現象もしかたがないが、大人の世界でもたびたびブームは起こる。
 今は何がブームなんだろう? ブームにうとい僕などはすぐに思い浮かばない。
 独身サラリーマンのころ、新卒入社の、いいなあと思う女子に淡い思いをいだいたりした。そんな気持ちを仲の良い同僚にうちあけると、彼はいくぶん蔑んだ目で僕を見て、「おまえ、おそいよ」と吐き捨てた。
 そうなのである。女子新入社員獲得作戦は、入社式の日から熾烈な争いがはじまっていたのである。そんな世情にまったくうとかった僕は、レースに参加するチケットさえ手に入れられなかったのである。
 まあ、世の流れに鈍感なのである。
 それで話しをもどすと、ちょっと古いが思い出すかぎりでは、納豆がブームになったり、バナナだったり、こんにゃくだったり……たまごっちだったり、ルイヴィトンだったり、山ガールだったり。
 外国でもブームはあるとは思うが、日本ほど顕著ではあるまい。ジャーナリストの本多勝一氏はそんな日本人の性向を「メダカ社会」と呼んだ。
 自分で考えて判断しないで大勢に合わせてしまう。そんな日本で、たとえば首相公選制など実施すれば、おそらく “人気投票” 以上のものにはならない。タレントやプロレスラーがかんたんに当選することを思えば、容易に想像がつく。
 なんだか前回のつづきのような話しになってしまった。(..;)
(photo:中国雲南省麗江にて)