フィンランドの真髄

 森と泉、といえば、年配者が思わず口ずさんでしまう往年の名曲『ブルーシャトウ』を思い出す。GS(グループサウンズ)全盛時、ブルーコメッツの大ヒット曲である。
 フィンランドは、国土の全域にわたって大小さまざまな湖沼が散らばる、まさしく「森と泉(湖)」の国である。
 ヘルシンキの北方約200kmのところにタンペレという町がある。人口は約21万人、これでもフィンランド第二の都市である。
 そのタンペレに向かった。タンペレから湖沼をめぐるクルーズ船に乗るためである。湖に囲まれたこの町からは、遊覧船やクルーズ船が数多く発着する。ヘルシンキからタンペレへは、日本でいえばJRの特急で1時間半である。
 僕たちは、「シルバーライン」と名付けられた、タンペレからハメーンリンナという古い町まで南下するクルーズコースのチケットを手に入れた。
 朝9時半、ピュハ湖に通ずるラウコントリの船着き場に出向いた。ここから乗船して8時間のクルーズである。
 夏場のみの航行コースだが、シーズンにはまだ少し早いのか、乗客は僕たちを入れて10名だった。
 出港してまもなくすると広大なピュハ湖に出た。デッキにいると、湖面を渡る風は冷たく、思わずフリースのジャケットをはおった。
 湖水はコーヒーのような色をしている。この地方の地層や森林からしみ出た色なのだろうか。それとも、光線の具合でそう見えるだけなのだろうか。
 船はいくつもの湖をぬって進んでいく。その大小の変化、あるいは多島海とでもいうような、湖面に点在する島々が目を楽しませてくれる。
 その多くの小さな島々には、たいがいコテージが建ち、桟橋が設けられている。もちろん湖の岸辺にも点在している。そこで休日を楽しむ子どもたち、家族やカップルが船に向かって手をふる。ときには、水上をプライベートなモーターボートがスピードを上げて行き交う。
 乗客はビールを片手に旅を楽しみ、船のレストランでランチをとる。船旅の醍醐味である。
 途中船は、パナマ運河のような閘門式の運河を通り、標高を上げた。そして、ヴィサヴオリという港で船を乗り換え、あらたに10名ほどの乗客を乗せて、夕暮れのハメーンリンナに近づいた。
 ハメーンリンナに住むという同乗の老夫婦が、湖岸に立つ古城や町のことを語ってくれた。ぜひこの町に泊まるように、とも。
 しかし、この湖の旅をフィナーレに、明日僕たちは帰国する。(^^)
(この記事は21〜22日にかけてのものです。)
(photo:フィンランドの真髄、湖沼の旅)