ブラティスラバ入門

 プラハ中央駅で列車に乗った。日本のような改札はなかった。ましてや、中国のような手荷物X線検査や乗るまえの検札もなかった。
 そういえばプラハのトラムでも、切符は車内のセルフ改札機で時刻を刻印するだけだ。あとで切符を回収したりもしない。ヘルシンキにいたっては、旅行者用のチケットは自分で使用開始時刻を記入するだけだった。
 もちろん、それぞれの市民が使うパスはべつの手続きが必要みたいだけれど、それでも不正乗車をしようと思えばいくらでも可能だ。
 罰則はあるようだが、この鷹揚なシステムはどこからくるのだろうか。やはり国民を信用しているのだろうか。“大人の国” とでもいうべきなのだろうか。
 プラハからブダペスト行きの国際列車に乗って約4時間、スロバキアの首都、ブラティスラバの中央駅に降り立った。
 プラハよりぐっとサイズが小さくなった駅舎を出ると、バスやタクシー、トロリーバスが行き交うロータリーがあった。
 とりあえず、ドナウ川近くの旧市街に建つホテルに向かおうと思った。ホテルまではトラムを利用するつもりだったが、そのトラムが見あたらず、駅にとってかえしてインフォメーションを尋ねた。
 しかし、ブロンドの髪をした窓口の若い案内嬢は、ホテルの存在どころかアクセスもわからないと答えあげくのはてに、タクシーで行ったらどう? と提案した。
 能力の個人差もあることだろうと思い直し、今度はやや年配の恰幅のいい女性の窓口のまえに立った。ところが、こちらが英語で話し出した瞬間、大きな手振りであっちへ行ってくれ、と追い払われた。
 くたびれた東洋人がよくわからない英語で話しかけてきた。そのめんどうくささは理解できるが、いきなりシャッターを下ろさなくてもよさそうなものではないか。仕事だろ?
 まあ、スロバキアに入ってすぐにそんな歓待を受けたわけだが、結局はホテルまで歩いて行くことにした。地図をよく見ると2kmたらずだし、プラハのホテルにスーツケースを預けてきたから身軽だったこともあるし。(^^ゞ
(photo:ブラティスラバ旧市街にて)