華麗なる攻防
先日、冬物の整理をした。ダウンジャケットをしまおうと思ったら、なんだか臭いがした。原因は自分臭である。ほとんど洗うことがないダウンジャケットには、当然体臭が染みこんでいるのである。
ちょっと臭いと思った。もしかして、加齢臭も入っているかもしれない。カレーをこぼしたこともあるし。でも、華麗な匂いでないことはまちがいない。
クリーニングに出すとこの手のものはとても高いので、衣料用の臭い消しを買ってきてためしてみた。
するとどうだ。たちどころに、もわっとした自家中毒的な臭気がなくなってしまった。化学の力、おそるべし。でも、化学の力で香料に置き換えただけかもしれない。
連休前に下水道がつまった。自宅の敷地内なので、とりあえず自分で復旧をこころみてみることにした。
トイレのルートではないのが不幸中の幸いだった。それでも、あまり美しい話しではないので、復旧作業の経過は省略する。
で、悪戦苦闘したが、結果はかんばしいものではなかった。やはりアマチュアの限界か、気合いが足りないのか、腰が引けていたのかはわからない。闇のルートは開通しなかった。
なかばあきらめかけて、荒い息をし額の汗をぬぐいつつ、くやしさにまかせて冠水しているマンホールの中にある塩ビの管を、ビニールハウスに使う鉄パイプでひっぱたいた。
するとどうだ。汚泥に住む怪物の咆哮のような音とともに、マンホールに溜まっていた汚染水の水位がみるみる下がっていった。
鉄パイプによる攻撃は最初にしつこくこころみたはずなのだが、そのときは状況の変化がまったく認められなかった。
しばし鉄パイプや針金、ドライバーを手に、マンホールのなかを凝視していた。凶器準備集合罪に問われかねない姿だったかもしれない。
しかし、下水菅も僕の努力を認めてくれたのだろう。……まあ、そういうふうに理解するしかないだろう。
久しぶりの労働の成果に気をよくして、夕方、晩ごはんをつくろうとした。ところが、いくら石鹸で手を洗っても、あのヘドロの独特な臭いが取れないのである。
それで思い出して、また化学の力に頼ることにした。しかし、皮膚に浸透してしまった臭いの成分はそうたやすく消えなかった。
ダウンジャケットが急に心配になった。(^_^;)
(photo:福建省泉州市仙公山にて)