グラフィック・デザイナーの憂鬱

 前回、「クライアント」と打ち合わせをした、というようなことを書いた。
 ちょっと反省している。というのは、このような “業界横文字” を使うときは、一瞬ためらいがあるからだ。ほんとうはあまり好きではないのだが、便利なので思わず使ってしまう。
 しかし、ほんとうに便利なのかなぁ? と、あらためて考えると、あまり便利でもないような気がする。ついつい気取ってしまう、というか、カッコつけてしまうのだろうなぁ。だいたい、横文字がカッコイイ、というのもおかしいが。
 この前の商談の相手は、つまりは「お客さん」なのだが、一方的な関係でもないので「取引先」というところかもしれない。う〜ん、やっぱりしっくりこないなぁ。
 そのへんの意味をぼんやりさせてしまう効果が、横文字にはある。
 たとえば、「トラブル」。大辞泉によれば、「もめごと」「いざこざ」「紛争」「故障」「不調」と出てくる。日本語はじつに多彩だ。やっぱり、安易に横文字を使うのはよくないかもしれない。
 僕は以前「グラフィック・デザイナー」をしていた。というより、そう名乗っていた、というほうが正しいかもしれない。
 その種の仕事をあらわす適当な日本語がなかった、という事情もあったが、そのころはカタカナ職業がカッコイイと、もてはやされた時代でもあった。
 でもどうしても、胸を張って、グラフィック・デザイナーでござい、といえない気恥ずかしさがあった。もちろん仕事はきっちりやったつもりだが、業界外の人からは「それ何?」といわれたものだ。
 思えば、カタカナが多い仕事関係だった。ライターやカメラマン、イラストレーターといわれる人々とよくいっしょに仕事をした。ときにはクリエイティブ・ディレクター、プリンティング・コーディネーター、というような人たちもいた。
 グラフィック・デザイナーは、イラストレーターやフォトショップインデザインやクウォークをマックで駆使して作業したものである。ーーまあ、パソコン方面にいくとカタカナ語が氾濫する。
 ……オー、ジャストでディナータイム。トゥデイはベーリビジーね。バット、ビジネスイズオーバー。ナウ、ビールでチアーズ。エンジョイしてナイトはリラックスリラックスね。……う〜む、どこかのタレントのようになってしまいそうだ。(^_^;
(photo:料亭にて)