仕事の要領
また京都へ行ってきた。仕事だ。たぶん。
クライアントの社長と会ってきた。でも予算の話しをしなかった。大丈夫だろうか、と、帰りの電車のなかでふと思った。
ずいぶんのんきな話しではあるが、お金の話しはなかなか切り出せないものだ。ほんとうはとても大事なことなのだが、じつは、あいまいなまま実務に突入してしまうことも少なくない。
正直にいえば、自分が手がける仕事の話しとギャラの話しを同時にしたくない。できれば、誰かが僕の代わりに交渉してくれるといいんだが。
でも、秘書も社員も下僕も家政婦もいないので、自分がやるしかないのである。
しかし、それで失敗したことはあまりない。というか、はっきりいって僕はギャラ交渉がヘタである。いつのまにか、なんとなく決まっているのである。
そんな体たらくだから、ときにはボランティアになったり、いいように値切られたこともあった。そういう仕事は、たいがい臭いでわかるのだが、断りきれないケースもあるのでしかたがない。
加賀地方の方言では、うまく立ちまわって要領がよいことを「はしかい」という。「あいつは、はしけ〜やつや」と、すこし音変化させて口にしたりする。
好意的な気持ちを込めて表現するときもあるが、いささか煙たげに、非難めいたニュアンスがまじる場合も多い。
そういえば、これまで生きてきて、「はしかいやつ」といわれた記憶がない。マヌケで要領が悪い男だったのだろう。
日帰りの京都では、クライアントとの待ち合わせ時間の1時(午後)を11時(午前)とまちがえ、11時なら午後は少し京都の街をブラブラできるともくろんだが、夢と消えた。
けっして、はしかいやつではない。そういうのを、「ちょろいやつ」というのである。(;_;)
(photo:冬の晴天は貴重だ)