インフルエンザの季節

 上海の街ではときどきマスクをしている人を見かけた。ところが、日本のような白いマスクをしている人は誰もいない。
 個性的といえばいいのか、色あいはそれほど派手ではないが、チェック柄とか縞模様とか……とにかく実用一点張りの白いタイプは見かけなかった。
 上海人にきくと、日本人はなぜ白いマスクをするのか、という。おそらく、マスクの用途がちがうのだろう。風邪を予防したり花粉を防いだり、というよりも、スモッグで汚れた空気から身をまもるためのようである。
 人々は、風邪をひいてもあまりマスクをしない。日本人が、風邪の予防だと信じている「うがい」などは一笑に付される。
 風邪に対しては、けっこう寛容というか、他人への感染に対してもかなり無頓着なような気がする。逆にいえば、日本人は潔癖で多少神経質かもしれないが。
 そろそろインフルエンザの季節である。毎シーズン流行するウイルスのタイプがちがう。香港型とかソ連型という名前がつく場合もあるが、由来する地名のご当地にとってはちょっと迷惑であろう。
 ソ連はもう解散したからいいのかもしれないが、ロシア型に変更しなくていいのか、とか、香港はどうして怒らないのか、という疑問はある。
 また、ニューヨーク型とかアルゼンチン型とかは、どうしてないのか、という疑問も当然ある。
 流行するであろうウイルスのタイプを予想して予防接種を打ったりするが、外れる確率もかなり高いのではないだろうか。
 「注射する」は中国語で「打針」という。日本語でも「注射を打つ」といういいかたをする。野球では3割打てば立派な成績だが、注射を打って、当たる確率が3割では打たれ損である。予防接種は副作用もないとはいえないし、だいたい自発的に痛い目にあいたくはない。
 従来型のインフルエンザは、罹ると多少しんどいが、おとなしく寝ていれば治ってしまう。しかし最近、「豚インフルエンザ」という新型の伏兵もあらわれた。毒性はそれほどでもなかったようだが、ほんとうに恐いのは、やはり「鳥インフルエンザ」だろう。
 今年公開され話題となった、社会派パニック映画『コンテイジョン』(スティーブン・ソダーバーグ監督/2011年)のような状況が出現する。
 とりあえず、ソ連や香港に負けないようにしたい。(..;)
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