ライブの個人的事情

 エリック・クラプトンとスティーブ・ウィンウッドといえば、60年代の終わりに打ち上げ花火のように出現したスーパー・ロック・グループ、ブラインド・フェイスの中心人物である。
 ブラインド・フェイスは一瞬のできごとであり、両者ともむしろその後の、それぞれの活躍で名声を手に入れたわけだが、その大物ふたりのユニットが臨時に編成され、金沢までやってきた。11月の終わりのことである。
 40年以上も現役の、しかも第一線でずっとやってきたアーティストが、ようやく金沢くんだりまで足をのばしてくれた、という感がある。
 基本的には外タレの巨人は、絶頂期にこんな地方都市までやってはこない。たいがいは、ピークをすぎた連中が、無垢な地方のファンを相手にひと稼ぎするために、あるいは、そういう目的(荒稼ぎまたは集金)のために、昔のバンドを再結成してやってくるのがふつうである。
 客観的にみれば、このふたつのビッグ・ネームにしても、全盛期とはいいがたい。トシも60代だし、その活動もマイペースだ。しかし、出すアルバムが着実に売り上げをのばす、という事実はまだ第一線である証拠だろう。
 ところが、ここで大きな後悔がある。じつは、僕は彼らの金沢公演に行きそびれてしまったのである。当初の予定では、まだ上海にいることになっていたので、チケットをスルーしてしまったのである。
 バック・バンドには往年の名プレーヤー、スティーブ・ガッドやウィリー・ウイークスが参加していたというから、今さらながら惜しいことをした。
 僕はライブのおもしろさや価値は理解しているつもりだが、じつは、これまでライブ会場にはあまり出かけなかった。
 20年ほど前に、U2を観に夜行日帰りで東京ドームへ行ったとき、席が外野のほぼ最後列だった。したがって、ステージは遙かかなたであった。それでもロック・コンサートでは、ギグがはじまったとたんに、末席まで全員総立ちとなるのである。
 僕はあれが苦手なのである。ノリが悪いのは承知だが、いきなりそんな興奮状態になれないのである。しかも、みんなイスの上に乗って立ち上がるものだから、すわっているとまるで穴蔵である。
 おそらく、あれは一種の予定調和の世界だろう。ノラなきゃ損なのかもしれないが、手拍子ぐらいならいいが、観客全員がペンライトを振る、なんていうシーンはかんべんしてほしい。
 つまり、ライブ向きの性格ではない、ということかもしれない。
 でも今日は、マニアックな話しにノッてしまった。(^^ゞ
(photo:一服)