クリスマスの問題

 「先生、日本はもうクリスマスですか?」「えっ? まだだよ。どうして?」
 「ブログに書いてありましたよ」「ああ、あれね。日本では、みんなクリスマスまでに、プレゼントを買ったりして準備するんだ。それで、街がにぎやかになるんだよ」
 「先生も何か買うんですか?」「買わないよ。キリスト教じゃないもの」
 「でも、日本は仏教ですよね」「そう、だいたいね。でも、日頃はみんな無宗教だよ」
 「先生もですか?」「わたしは、イスラム教。アラーの神さ」
 「えっ? ほんとうですか?」「そうだよ。毎日お祈りで忙しいんだ」
 「知らなかった。……でも、先生はよくビールを飲んでいますね」「そ、そうだね。き、規則がゆるい宗派なんだ……うちのコーランには、ビールは没问题(問題ない)って書いてある」
 「中国語で?」「あ、え〜と、あれは何語だっけ……ところで、キミたちは何かするの?」
 「クリスマス? う〜ん、カレのいる人は食事とか……」「キミは?」
 「わたしはいつもと変わらない」「そう。さみしい?」
 「べつに。わたしだけじゃないし」「そうか。プレゼントを送ろうと思ったんだけど……」
 「えっ? ほんとうですか?……わたし、日本の◯◯がほしいんです」「あん? ◯◯?」
 「そうです。うれしいです」「あ、ちょっと待って……お祈りの時間だよ。またね」
(photo:なかなかのセンスです。旅先にて)