身分証のよもやま

 中国の高速鉄道の切符を買うときには身分証明証が必要である。外国人ならパスポートである。当然それがないとチケットは買えない。
 今年の5月までは、そんなものがなくても自由にチケットが買えたので、ずいぶんめんどう臭くなったものだ。とくに外国人は自動販売機で買えなくなったからなおさらだ。それに、鉄道でも駅の入口で手荷物X線検査をするので、ちょっとした旅でもうっとうしい思いをする。
 他国の事情だからがまんするより仕方がないが、国民に共通の身分証明証を持たせれば、当局はなんでもできそうである。
 最近日本でも、いたるところで(いたる場面で)、身分証になるようなものを見せろ、といわれることが多くなった。
 たいていは自動車の運転免許証で十分間に合うが、日本もしだいにやっかいな世の中になってきたような気がする。
 中国にいるときは、外出時にいつもパスポートを携行していた。中国人は身分証明証の携行が義務づけられているから、当然、外国人はパスポートである。
 たとえば、公安から職務質問を受けるハメになったときに、パスポートがないとめんどうなことにもなりかねない。だから、公安の近くにはなるべく近寄らないよう、連中が近づいてきたらすみやかに離れるよう、日々心がけてきた。
 パスポートを持ち歩いていると、少なからずたえず緊張を強いられる。だから、帰国した今は、そのストレスを担っていた空っぽ頭の一部は、きっとだらりと弛緩しているだろう。
 でも、じつは泉州時代は、平日は自分の部屋に置いていた。学校と寮を往復するかぎりでは問題ないだろうと判断したのである。
 しかし、上海でのホテル住まいでは、ホテルという性格上いろいろな人間が出入りするので、常にパスポートは持ち歩いていた。
 中国では、身分証にまつわる事件をときどき見聞きした。おそらくアレをたえず携行するというのも、けっこうたいへんなんだろうなぁ。…>_<…
(photo:高速鉄道の切符。左下にパスポートNo.)