山から遠くはなれて
日本へ帰ってきたら山へ行きたい、と思っていた。ずいぶん山から遠ざかっている。
中国でも日本の富士山は有名で、授業でもよく学生から「富士山に登ったことがあるか」と聞かれる。「ない」と答えると「ええ〜?」と多少けげんな目で見られる。
日本には、山は富士山しかなく、日本人なら当然登ったことがある、と思われているフシもある。日本人はみな柔道ができる、と誤解されているのと似ているかもしれない。
山が好きだよ、と学生に宣伝しているから彼らにしてみれば、富士山にも登ったことがないこのオッサンはほんとうに山に登るのかい? と思ったことだろう。
たしかに、学校の階段の上り下りで息があがり、学生と卓球をすれば足がもつれる。重いザックを背負おうものなら折れてしまうような体型だから、そう思われてもしかたがない。
富士山は、登る山としてあまりおもしろくないんだ、と僕なりの理由を述べても、彼らの疑問、というか疑惑は晴れない。しかたがないので、パソコンに収納してあった北アルプスの写真をプリントして見せたら、少しは納得してくれた。
それで、帰国してからなまった身体を鍛えなおしているが、これから冬に向かうので、はたして厳しい気候に耐えうる体力を回復できるか疑問である。
だいいち寒さが苦手ときているから、積雪期は歩くスキーでお茶をにごしている。しかしそのスキーからも近年は遠ざかっているから、フィールドでの勘はずいぶん鈍っているだろう。
じつは、山へ登る身体をつくるには山へ登るのが一番である。などという禅問答のようなことがいわれている。ほんとうにそのとおりである。
雪が積もるまえに一度……と思っているが、体力づくりとともに用具の点検をしないといけない。
以前、山中で登山靴の靴底が剥がれたことがあった。さいわい下山中のことで、ゴールも間近だったので事なきを得たが、あれはけっこう危険度が高い。若いころは、遭難一歩手前、ということもあった。
まあ、いずれにしても気持ちは若いままだが、今日もジムの自転車こぎで根を上げてしまったので、山はまだ遠いようだ。身体は正直だなぁ。(/_;)
(photo:季節はずれだが、夏の白馬岳)