連れ合い、という響き

 もっと奥さんのことを書いてください。と、先輩の先生からいわれた。
 もちろん、書けることはたくさんあるが、このブログを読んでくれる人の興味の対象ではないだろう、という判断のもとにあまり書かないことにしている。第一こっちだって恥ずかしい。
 先日、地元の旧友たちと飲みに行った。彼らは、僕のようにあれこれ職歴をかさねて生きてきた軽薄な者とちがって、ひとつの会社で地道にやってきた連中だ。
 彼らは、停年も視野に入ってきているので、当然のようにひとかどの地位についている。それはそれでまことにけっこうなことなのだが、顔を合わせれば、そんな会社の肩書きなど関係なくバカ話しができるのはうれしい。
 子どものことや親のこと、それぞれに山や谷があり、家族の物語があるものだ。それは、世代変遷のストーリーであり、その中心に僕たちがいる、現在進行形の話しである。
 子どもたちのことは、これからの話しなので明るいが、年老いた親のこととなると、そうもいかなくなる。
 旧友のひとりは、病床にある母親の世話を、妻にほとんど任せている。そんな家族の状況をひとしきり話した後、いつもは皮肉屋の彼が神妙な顔つきで、「僕はいい嫁をもらった」とポツリといった。
 彼は、友だちへの言動はぶっきらぼうだが、奥さんにベタベタで日頃から大切にしているのは知っていた。だが、そのあまりの正直な告白に、思わずビールを吐き出しそうになった。
 ーーたとえばこんなふうに、親しい友だちなら、その家族が気になるのは自然かもしれない。とくに配偶者に対しては、とくべつ彼女とは親しくなくても(親しいとまたべつの問題が発生する)、多少なりとも興味がわくのは当然だろう。
 「人妻」という独立したことばがあるように、人の配偶者には、人の興味をくすぐるような何かとくべつな香料があるような気がする。まあ「人妻」を例に出すのは不適切かもしれないが……。
 ところで、前出の彼のようなセリフは、同じような場で僕には口にできないだろう。彼は、えらいのかバカなのかおめでたいのかわからない。でも、僕よりは素直で正直なやつなのである。(^_^;)
(photo:空港にて)