慢慢走、でいいじゃないの

 背筋が寒くなった。中国の高速鉄道のあの路線に乗ったことがある。何回も。
 高速鉄道網の突貫工事と電車のスピード。いくら100%国有地とはいえ、あのスピードは恐ろしい。それに加えて電車のスピードもすごい。
 でも、どこか無理をしているような気がして、いつか事故が起きるのではないかと、ずっと思っていた。
 中国にいると、こういった事故や事件の荒っぽい解決方法が、ときどきみられる。お国柄といってすまされないな、といつも思う。もちろん、国民性といって片づけることもできない。
 じつはおそらく、これはとても重要な問題だと思う。こういうことを繰り返していると、ボディーブローのように国民の心を蚕食していくだろう。
 中国は交通網の整備がすさまじい。看板の高速鉄道のほかに、高速道路や飛行場。航空便の離発着も、毎日ものすごい。だから、欠航、遅延は日常茶飯事である。それだけ人が多く、需要があるということだろう。
 泉州から厦門往復には、いつも高速鉄道を利用していた。中国の鉄道の切符販売システムは、日本とちがってややこしい。乗車する駅以外で買うと手数料を取られる。前売り切符はさらに手数料が高い。
 観光地をかかえる駅では、休日になると窓口に列ができる。自動販売機もあるが、これがけっこう故障する。並んで待っている列の機械が突然機嫌を悪くすることもけっこうある。
 割り込みはあたりまえだし、列の前の者に切符を頼んだりする知能犯もいる。もちろん、操作がわからず立ち往生する方々も少なくない。まあいずれにしろ、日本のようにスムーズにはいかない。
 この6月からは、鉄道の切符を手に入れるときは身分証明書が必要になった。外国人はパスポートが必要なのである。しかし、あまり意味があるとは思えない。
 X線での手荷物検査は以前からおこなっており、飛行機並みのシステムになってきている。飛行機同様、乗車するまでにいくつも関所があるわけだ。ちょっとわずらわしい。
 かように、乗客をまどわせたり、チェックや管理したりはしつこいまでにやっているのだが……。
 「慢走!」というあいさつがある。日本語では「気をつけて!」という意味だが、文字通りの意味は「ゆっくり行きなさい」である。スピードよりも安全が大事である。(`_´)
(photo:ハヤチネウスユキソウ。早池峰山にて)