雨の日の出発

 土砂降りの雨。それほど長くは続かないが、晴れてはまたやってくる。南国の雨というべきものであろうか。
 ちょうど一年前も、このスコールのなか、おそらく湿度100%のなかをスーツを着て会場へ向かった。
 今日は学校の卒業式。一年前のこの日、僕は学校にデビューした。卒業式からのデビューなど、なかなか経験できるものではない。
 それにしても、この学校が何かの行事をする日は必ず雨である。前日まで雨の気配がなくても、大急ぎで梅雨前線がやってくる。
 僕は山へ行くときは “雨男” といわれている。しかし、ここ福建省まで効力があるとはとても思えないので、たぶん僕のせいではない。おそらく校長だ。
 今年は経費削減、かどうかはわからないが、例年のようにホテルを会場とせず、質素に校内でやることになった。僕たち教員が、ムダなことはするな、と騒いだからかどうかはわからないが、とにかく土砂降りのなかをホテルまで行かずにすんだ。
 見てくれや見栄、前例を重要視する中国の社会では、こういうことは画期的かもしれない。そんな文化を背負って生きてきたような校長にしてみれば、ずいぶんな英断である。
 しかし彼は、気のせいかあまり機嫌がよくないように見え、うっぷんを演説のような長い挨拶で晴らしたかのようだった。
 ともあれ、毎日まいにち日本語づけの日々から解放された学生たちの顔は明るい。おそらく、異文化の言語の習得は苦しいことの連続だろう。それは、自分が経験した言語学習にあてはめてみれば、容易に察しがつく。
 そして、自分の母語を彼らにおしえる僕たちには、日本語を外国語としてとらえた質の高い教授能力が要求される。
 低迷する日本に興味を持ち、日本の文化を理解しようと努力し、こうして日本語を学ぶ若者を見ていると、この仕事の価値を再認識せざるをえない。はたして僕はどれほど貢献できただろうか。
 外での写真撮影には陽がさした。天はそこまで意地悪ではなかったようだ。
 卒業生の前途を祝したい。(^o^)
(photo:写真撮影の合間に)