痰なる問題

 QQという、中国でもっとも普及しているインターネットのコミュニケーション・ツールがある。一種のインスタント・メッセンジャーである。
 とくに、若者のほとんどはこのサービスを利用して、チャットやメール、掲示板、ブログなどを楽しんでいる。携帯でももちろん問題なく利用できる。
 僕も去年学生に頼んで番号を取得してもらった。学生たちとはネット上でときどき遊んでいる。
 最近、自分の掲示板に「痰を吐くのは中国の文化か?」という問題提起をしたら、かなりの意見が寄せられた。
 曰く、「それは個人の問題である」「決して文化ではない」「先生の考えには賛成できない」「文化ではないが、恥ずかしく思っている」等々……。
 ちょっとした挑発のような気持ちで提示したようなところもあったが、彼らも気にしているのかもしれない、ということがわかっておもしろかった。
 痰を吐くことのいい悪いは別として、僕はそれは文化だと思っている。しかし、外国人がどうこうできる問題ではなく、どうなっていくのかは中国人にゆだねられる。
 もう少しこちらに中国語能力があれば、議論を戦わせることもできたのだが、いかんせん多少彼らの頭に残る程度で終わりそうである。まあそれでも成功ではある。
 このブログでもたびたび書いているが、痰を吐く行為はけっこう気になるのである。
 先日バスに乗ると、中年のおばさんがすっと立って席を譲ってくれた。見たところ僕とあまり歳がちがわないような気もしたが、ありがたく好意を受け入れた。よほど疲れた顔でもしていたのだろうか。
 ところが、前に座っているおじいさんが、窓を開けてひっきりなしに外に痰を吐くのである。しまいには手鼻までかむ強者であった。
 はは〜ん、それであのおばさんは席を……などと彼女の好意を勘ぐってしまった。
 窓からの風で、痰がもどって入って来はしないかとヒヤヒヤしていた。あらたに老人が乗ってくるのを待つ作戦を考えていたが、実をむすばなかった。
 しかし振り返ってみると、僕の子どものころは、大人たちは平気で痰を吐いていたような気がする。(-_-;)
(photo:少林寺にて)