“マナー” を辞書でひくと…

 これまではずっと、折々に新しい相棒と付き合ってきた。別れるときも、さほど忸怩たる思いはなかったが、中国へ渡るときはやはりちがった。
 捨ててきたのだ。正確にいえは売り飛ばしてきたのである。
 ーー車のことである。中国へ渡るときに車を処分した。頼りになる専属の相棒を失ったことは、やはり少しさみしい。
 などと、少しかつてを懐かしんでみる。僕の車は娘の新車に変身して、元気に活躍している。
 ときどき、車があれば、と思う。ハンドルを握ればこっちのもの。中国人も真っ青の、狂気のドライバーに変身である。
 公道をぶっ飛ばし、車間をぬって、タイヤを鳴らして走るなんぞちょろいもんよ。あ、そうだ忘れてはいけない。窓を開け、威勢よく痰を飛ばすのだ。ふふふ……。
 ーーなんてこと、まあ無理である。クラクションを鳴らされてはどんどん追い越され、割り込まれ、交差点ではいつまでも曲がれず、あげくのはては立ち往生……なんて光景が目にうかぶ。
 あ、そうだ忘れてはいけない。対向車から繰り出された痰が、弾丸のようにフロントガラスに当たるのである。あ〜汚ったね〜。たぶん火のついた煙草も飛んでくるな。ペットボトルも飛んでくるかもしれない。
 とにかく無法地帯だから、善良な小心者は近寄れない。
 モータリゼーションが緒に就いたばかりのこの国。巷を走る車は、大型で新しいものが多い。ここ泉州ではまだ渋滞は恒常化してはいないが、おそらく時間の問題だろう。
 インフラ整備は急ピッチで進められているようだが、いくらこの国でも都市部の交通渋滞には、対策が後手後手にまわることになりそうだ。
 もうひとつ。マナーの問題。それは、あまり期待できないかもしれない。いろいろと問題は多いが、たとえば、電動バイク(というかスクーター)はほんとうに危ない。けっこう大きいのである。電動とはいえかなりスピードも出るようだし、だいたい音もなく近づいてくるので不気味である。
 電動バイクの最大の問題点(にちがいない)は、免許がいらない、という点だ。中学生でも縦横無尽に乗り回している。もちろん2人乗り、3人乗りは問題ない。
 暗い夜道に気をつけるのは常識だが、明るい昼間だって、糞や痰を踏まないように、バイクや車に当てられないように注意して歩くのは、ひとつの技術である。(*_*)
(photo:南安市、鄭成功記念館にて)