躾が気になるおじさん

 通りを埋め尽くすナイロン・ジャージ軍団。毎日、昼と夕方に発生するので、なるべく出くわさないようにしている。
 近くに中学校がある。生徒たちは、男も女もみな同じ服を着ている。いわゆる制服であるが、それがナイロン・ジャージなのである。
 なんという大胆な。なんという斬新な。ともいうべき、その意表をついた設定にまず驚く。
 しかしなあ、それはいかがなものか、と体が枯れてきたおじさんだって思う。育ち盛りに、あんな汗や水蒸気を通さない素材はまずいだろう。それを考慮して、ゴアテックスを採用しているとはとても思えないし。
 だいたいあれを見ていると、一見軽快そうなので、授業は毎日体育だけ? とふつうの日本人は思うはずだ。
 泉州市内にたくさん中学校はあるが、みんな同じナイロン・ジャージである。それぞれ模様と色がちがうだけで、素材やスタイルは同じようだ。
 日本の学校の制服も値段が高いが、うちの学生にきくと、あれもとても高かったそうである。そういうところで独占的な利権の臭いがするのは、ここでも同じか。
 最近では暑くなったので衣替えが行われ、上は半袖ポロシャツに替わった。もちろんそれも制服である。
 そんな少年少女たちが、昼になると飯を食いに、巷へ出てくるのである。それで、近くの飲食店はどこも若い体臭で充満するからたまらない。
 躾、といえば、最近では日本でも学校に躾を求める親がはびこってきたが、こちらではどうなのだろうか。少年少女たちの食べっぷりを見ていると、小言のひとつもいいたくなってくる。
 しかし、いちいち小言をいっていると、自分が食べるヒマがなくなるので、黙って見過ごしている。でも、いつか中国語を用意していって、たしなめてやろうと思っている。いつか、な。
 しかしとにかく、はたしてここが「食の国」なのか、と思ってしまう。それも文化なのさ、と思ってはみるが、この子たちがまた親になるのか、と思うとくらくらする。
 昼食時は、しょうがないので時間差攻撃に徹している。たいていは軍団が去ったあとに出かけるが、そうすると、食べられるメニューが少なくなっているのが難点である。(^_^;)
(photo:この地には原色の鮮やかな花が多い)