行きたいのは山々だが…

 八日間つづいた雨がやんだ、かと思うと夏のような暑さである。夏が来れば思い出す、はずの尾瀬も、異国にいるとつい、思い出すのを忘れてしまう。
 その尾瀬だが、今や世界的知名度となった「フクシマ」県の南西部に一部からんでいる。このような希有な自然に、放射能がばらまかれる可能性だってあるわけだ。
 あ、今日は原発方向の話しをするつもりはないのだ。山であった。
 外国人が知っている日本の山は、なんといっても富士山だ。日本に留学している学生も、一度富士山を見てみたい、という。元気があるやつは、登ってみたいという。
 僕は、就職したとたんに山に目覚め、それ以来あちこち山歩きをしてきた。山岳部や社会人山岳会の経験はないから、もちろんアマチュアではある。
 しかし、長年の経験で身についたものは少なくない(と思っている)。きのう今日に始めた中高年登山者とはちがうのだよ、キミ。といいたいところだが、ここ数年は、山へ入るとすぐバテたりするので、ぽっと出の山おばさんよりだらしがない。
 で、富士山であるが、僕はまだ未登頂である。行く気がしないのである。食指が動かない、というか。登る山として魅力を感じないのだ。
 べつに粋がっているわけではない。百名山にも興味はないから、もしかしたら今後も行かないかもしれない。
 夏が来れば思い出すのは、フィトンチッドが充満した深い森をかかえる日本の山である。若い頃毎週のように通った北アルプスや上信越の山々、そして白山などの夏山の空気の匂いが、夏が近づくと見事によみがえってくるのである。
 まあ、泉州では無理である。こちらでは、登山がレジャーとして発達していないから、うかつに山へなぞ入れない。昔からの信仰に関係した山は登山道も開かれているが、あくまでも観光ルートとしてのそれである。
 「先生は、ほんとうに山へ登っていたのですか?」
 そんな山へ学生たちと行ったときに、そういわれた。息があがっていた。確かにこれじゃあ、ただのやっかいな中年オッサンである。(__;)
(photo:市内、真武廟にて)