想定外に泣く

 学生はよく、お腹が痛い、といって休むことがある。それは口実だろう、とずっと思っていたが、あながちウソでもないようである。
 学校の外では、小さな屋台や路上でいろいろな食べ物を売っている。揚げ物が多いのだが、油が心配だし、だいいち衛生的とはいえず、ある程度現地に順応した身とはいえ、僕は一度も買ったことがない。
 そんなものをときどき学生がくれるのだが、そのときはしかたがない、好意をゴミ箱に捨てるわけにもいかないので、運を天にまかす。
 学生の様子がおかしいので、どうしたのかと聞く。風邪薬を飲んだらふらふらする、という。風邪よりそっちのほうが恐いだろう。
 じつは、僕も今週ふらふらした。中国製風邪薬のせいではない。蚊のせいである。やつらのせいで寝不足になったのである。まあ、このところの気候の変動で、多少風邪気味だったせいもある。
 週末遊び歩いているからだ、と日本にいる家人にいわれそうだが、思い当たるフシがあるから家人とは週末の話しはしないようにする。好奇心のうずきにはまったくもって弱いのだ。
 たとえばある日は、まず目的地に向かうバスをさがす。ときには乗り換えるバスを見つけるのにも苦労する。人の波をかきわけないといけないので、それだけでかなりの労力だ。
 そして、快適とはいえないバスで移動して、おおざっぱな市販の地図を頼りにあちこち歩く。もちろんバイクや車や自転車にひかれないようにし、道行く人々の痰攻撃から身をかわす。アレはゲリラのように、車やバスの窓からも飛んでくるから危険だ。
 う〜む、これは意外と疲れるのだろうな。それに、若くはないし。
 授業に穴をあけるわけにはいかないので、節度を持って行動しているつもりだ。それでも、蚊の襲撃のように想定外の事態にみまわれることもあるので、まったく油断できない。
 先週行った、深沪という港町はじつにふんいきのあるいい町だった。しかし、あそこの海の風にのどをやられたらしい。声を出す仕事なので、今週はずいぶん龍角散トローチのお世話になった。
 日本はGWである。中国も労働節である。こちらの休みはたった3日間。月曜日までだ。また人々は大量に移動することだろう。僕は移動しないもんね……たぶん。(^_^)
(photo:福建名物、高甲劇の舞台)