漢字は忘れるものである
きっとワープロやパソコンを使ってからだと思う。漢字を忘れたのは。黒板に字を書いていても、ふとつまることがある。
「ひらがな、って便利だなぁ」といいつつ、代用したりしているが、当然学生の失笑を買う。そして、一段階評価が下がる。まあいいさ、忘れたんだもの。
ときどきは学生におしえてもらうような始末。そして、たまに彼らにまちがった字をおしえたりすることもあるから、こうなると教師失格である。
それはあってはならないことだが、じつは、ずいぶん昔にレタリングを勉強したせいか、僕が書く字は活字体(明朝体、ゴシック体など)の形なのである。たとえば「道」とか「令」とか「北」などは、小学校で習った文字とはあきらかにちがうのである。
書く文字に近いのは教科書体である。だから、初級の日本語関係のテキストの書体はすべてといっていいほど、教科書体を使っている。
さて、忘却した漢字を再びこの空っぽ頭にインプットするのは、至難の技である。ところが、今は魔法の杖のような電子辞書というものがあるから、おかげでずいぶん助かっている。最近では、外国語の発音までしてくれるので、これまた重宝である。
ただ、難点がある。いつも同じ女性の声なのだ。それに、あまり感情がこもっていないし。どうでもいい機能や辞書はいらないから、ここのところを少し改善してもらいたいナ、とおじさんは思う。
たとえば、好きな女優の声とかさ、入力できて、そのトーンも、やさしくとか艶っぽくとかふつうとかそのときの気分によって選択できたら、ずいぶんと語学の勉強もすすむのではないか、と推察される。
そんな電子辞書があったら買うんだがなぁ。しかし、ちょっと怪しい世界であるなぁ。
中級のクラスでは、涼しい顔をしてひらがなで書くと、まじめな学生は、漢字も書いてくれという。すまんすまん、とあやまりつつ辞書をひく。ほんとうは、忘れていて書けなかったので、すぐにバレてしまう。
いやな奴らがいるのである。(>_<)
(photo:泉州、承天寺にて)