バクタプルのヨーグルト

 カトマンズに隣接したすぐ南に、パタン市という古都がある。そのパタン市在住のSさんがいう。
 「政治家は政争に明け暮れているし、庶民は政治よりもお金を得ることに一生懸命です」、と。それを聞くと、国の状況は違えども、なんだかどこかの国とオーバーラップしてしまう。
 Sさんは、ネパール駐在の某大使館ではたらくキャリアウーマンだ。長らく日本に留学していた彼女が発することばからは、混沌として出口が見えない今の政治状況に対する苛立ちと、何よりもお金とモノが優先する庶民の心を憂う気持ちがよみとれる。
 カトマンズは、車とバイクが列をなし、人もあふれている。排気ガスが堆積する町は、インフラ整備もままならず、まもなく慢性的な渋滞におちいるだろう。
 Sさん夫妻と、カトマンズの東12kmに位置するバクタプルという町に出かけた。ここは中世の町並みがそのまま残る古都である。映画『リトル・ブッダ』の撮影地としても有名でもある。
 以前は細い田舎道をたどって訪れたような記憶があるが、今は日本からの援助で、片側2車線の立派な道がついている。
 町へ入る道路にはすべてチェックポストがあり、外国人はそこで入場料をとられる。今回は1100ルピー(約1250円)。現地の物価水準からするととても高い。12〜3年前に来たときの倍近くか。まあしかたがない。
 町のメインストリートに面する建物は、一部新しくなったものが目立ち、土産物屋が増えた。そして何よりも、町なかを車が走るようになったことがおどろきだ。一般車は通行止めだったはずだが。
 すべて、賄賂や政治的圧力でかんたんにルールが変わるこの国のこと、これもそんな事例なのだろうか。Sさんもため息をつく。
 とはいえ、この町にはまだ落ち着きと静けさがあり、カトマンズの騒々しさから逃れた身には心地よい。
 ヨーグルトの古い製造元に寄った。バクタプルはおいしいヨーグルトの産地としても有名である。できたてのヨーグルトを食べた。う〜ん、確かに美味だ。Sさんも、これを楽しみにここに来た、といってもいいくらい満足そうだ。
 パタンで日本語教師をするSさんのダンナのDさんは、そのヨーグルトの菌を持ち帰り、家でつくってみるそうである。(^-^)
(photo:バクタプルにて)