東京あれこれ

 一応長男なので、帰国してからはけっこう忙しい毎日をおくっている。
 田畑関係の書類のチェックや確定申告の準備、味噌の仕込み、妻子の車の点検、たまった郵便物のチェック、飲み会、お袋のグチを聞く、雪かき……などなどとりあえず雑事をこなしてきたが、よく内容を検証してみると、長男らしいのは田畑関係ぐらいだろうか。
 昨日今日と、東京へ行ってきた。久しぶりの東京であった。あっちにもいろいろ用事がたまり、一気に片付けてきた。といいたいところだが、処理しきれなかった。重要案件のみでやむなく帰ってきた。
 中国へ行く前はボランティアで日本語をおしえていた。多くは中国人留学生が相手だった。彼らは一様に、日本は空気がきれいだ、といっていた。じゃあ東京とか大阪とかもそうか? ときくと、そうだという。
 東京の空気がきれいだ、なんて思ったことはなかった。しかし、今回は街ゆく人がクリアに見えた。やっぱり彼らのいうことは正しかった。
 泉州ではそうはいかない。街ゆく人がかすんで見える。もっとも、あまりきっちり前を向いて歩いているわけではないから、どれくらいのちがいかはわからない。なにせ、通りには何が落ちているかわからないから、どうしても足もとばかり見て歩くことになる。鼻毛の伸びは確かに早い。
 まあつまり、身体や感覚が中国仕様になってしまったのかもしれない。
 東京では、スマートフォンを持っている人が目立つようになった。スカートを履いている成人女子も増えたようだ。
 中国の女子学生に、日本の高校生は短いスカートを履いているらしいが、ほんとうか? ときかれたことがある。ほんとうだ、と答えると、どうしてそんなものを履くのか? とさらに聞かれた。さあ、どうしてだろう?
 夜、中国の日本語学校でお世話になったY先生と再会した。今は都内の日本語学校で、やはり精力的におしえていらっしゃる。
 僕は、先生から引き継いだクラスの報告をした。調子に乗って、先生が志なかばでできなかった、学生との交流のあれやこれやを、少し得意気に話した。先生はいつものように、柔和な表情で耳をかたむけてくださった。
 先生と別れて、ホテルへと向かう道すがら、はっとした。あれだ。あの懐の深さが、学生たちの心にしっかりと刻まれたのだ、と。
 オレは修行が足りんなぁ。(>_<)
(photo:渋谷の喧噪)