いきなりの学校

 中国人スタッフのYさんが退職した。いきなり知らされた。なんでも、いきなり、である。中国社会がそうなのかわからないが、この学校ではいつもそうである。
 いきなりの食事会。いきなりの広報任務。いきなりの写真撮影。いきなりの学生の入学。いきなりの行事決定。いきなりのボーナス……これなら、いきなりでもいきずりでもいいんだけど。
 そうそう、Yさんであった。Yさんは、学校のPC関係やコピー機など機器の管理を一手に引き受けていた。まだ20代のエンジニアである。
 その人が突然いなくなったのである。といっても、失踪したわけではない。“いいところ” へ変わったのである。何のあいさつもなく、薄情なやつである。
 先週末、同じ寮の給水所のところで会ったときには、いつものようにニッと笑ってあいさつしてくれた彼だったが。
 マクドハンバーガーが好きで、ある日いっしょに食べにいったら、丸い顔のほおをいっぱいにふくらませてうまそうに食べていた。僕のスティックポテトをあげると、大事そうに鞄にしまって持って帰った。
 そういえば、丸い顔に愛嬌のあるメガネ、そしてちょっと太めの体型。という彼の風貌は、東京の秋葉原なんかを歩くとピッタリはまりそうである。多少キョロキョロでもすればサイコーだ。
 おしい人をなくした……おっと、日本語がおかしい。栄転だろうから喜んであげなければいけないか。やはり優秀なやつだったのである。
 しかし困った。いきなり、に慣れっこになっている日本人先生たちも、今度ばかりはしばし絶句であった。
 PCなど機器類はすべて古い。Yさんのお世話にならない日はない。けとばして直るものでもないし。せめてコピー機ぐらいちゃんと直していけよなぁ。
 ドクターがいなくなったコピー機は、今日もゴンゴンとうなり声をあげている。(;O;)
(photo:安海鎮にて)