ホテルの作法

 妻、遠方より来たる。年末に、連れ合いが遊びにきた。
 日本から来るときによく利用する、上海から晋江(泉州)の国内便のフライトには、いつもびくびくさせられる。中国の空を、毎日ウンカのごとく飛んでいる国内便のかなりが、運休もしくは大幅な遅延を余儀なくされているからだ。
 夏にやってきたときは、乗る予定の便が運休になり、急遽上海の浦東空港から虹橋空港にまわり、ちがう便にふりかえてようやく飛ぶことができた。もっとも、その便も4時間ぐらい遅れて、晋江に到着したのは午前3時ごろだった。
 しかし今回は、予定便が1時間程度遅れただけだったので、ずいぶんさわやかな気持ちだった。いかん、中国のペースに馴らされている。それでも怒るべきだったのだ。おかげで、市内へのバスがもうなくなっていて、高い料金のタクシーに乗ったのだから。
 それはさておき。この町にはじめてやってきたときから、市内の中心部にあるH大廈というホテルに宿をとっている。一応星は4つだが、ゲストに対するサービスは、とても星の数に値するとは思えなかった。
 「思えなかった」と過去形にしたのは、今回泊まってみると、少し様子が変わっていたのである。従業員が笑顔を見せるようになり、ホテル内のレストランの味も格段によくなっていた。
 いったい何があったのだろうか。中国というシステムからすれば、サービスに対する意識が、ちょっとやそっとで変わるはずがない。
 考えられることはただひとつ。政府関係者が宿泊し、「なんだここの飯は…」などと側近につぶやき、ただちに飯店経理(ホテルマネージャー)が呼ばれたのにちがいない。しかも、従業員は笑顔というものを忘れているから、いつも通り仏頂面をしていたのにちがひない。たぶん。
 まあ、黄門さまの印籠ですね。とてもいいことだと思う。
 もっとも日本のホテルも、マニュアル通りで心を忘れていたりするから、あまり偉そうなことはいえない。一部の旅館などでは、むこうの都合で客があしらわれたりするから、おもてなしの心とはほど遠い。
 そんなこんなで今年もまた、なかなか退屈させてくれない中国をウォッチするのが楽しみである。(^。^)
(photo:露天の川魚売り。少し内陸の南安市にて)