「小紅帽」顛末

 断る理由もなかったので、気やすく引き受けてしまった。「小紅帽(赤ずきんちゃん)」の舞台演出を。
 というといささかおおげさかもしれないが、日本語指導のつもりで入ったところが、いつのまにかがっぷり四つにかかわってしまったのである。
 僕が担任しているクラスは、市内の専門学校から5カ月間だけこの日本語学校に出向している。毎日午前中は僕たち日本人教師がおしえるが、午後は本校から中国人の先生が出張してこられる。
 先日その本校で、語学専攻学科の発表会があった。内訳をいえば、語学といっても英語と日本語で、今は英語専攻が圧倒的に多い。
 発表会の内容は、寸劇と歌である。企画が先行していた「小紅帽」への協力を僕は承諾してしまったが、発表会の10日ほど前から、さらに2つの日本語劇グループが我クラスから編成された。
 結果的には、時間もなくその2つのグループへはほとんど何も協力できなかった。本校の行事とはいえ、心情的には少し苦いものが残った。
 まあそれはさておき、シナリオから起こして10分の寸劇に仕上げる過程は、なかなか骨の折れるものだった。僕の経験はといえば、これまで約30年間、年に7〜8本の新劇を観てきた、ということしかない。有り体にいえばシロウトだ。
 でも、演劇鑑賞団体の運動にかかわってきたせいか、少しは演劇というものの舞台裏や成り立ちを知っているつもりだ。それが多少なりとも役だったかもしれない。
 僕が肩入れした「小紅帽」グループは、残念ながら2位に終わった。ところが、演じた学生たちは納得せず、もらった賞状を放り投げた。
 よほど自信があったのだろう。なだめてもすかしても、彼らにとっては結果が過程より重要視されるらしい。楽しかったし、がんばったからそれでいいじゃないか、といいきかせてもダメなのである。ふ〜。
 しかし、英語劇も含めた他のすべての劇に、ちゃんと指導が入っているとはとても思えなかった。そんななかで「小紅帽」が1位をとればクレームがつきかねない(僕の力量は別として)。だからそれでよかったのだろう。
 僕はもちろん楽しかったし、とてもおもしろかった。得難い体験をさせてもらった学生たちには感謝である。(^-^)
 ※本番舞台の写真はあまりに状態が悪いので割愛します。