銀行閑話

 あまり近づきたくないところに、警察、役所、銀行などがある。これは日本でも中国でも同じだ。
 なにも後ろめたいわけではないのだが、警察や役所はともかく、こちらで生活していると銀行とはけっこう接触がある。
 めったに窓口を利用することはないが、口座開設のときだけは行員の顔を見にいった。そのときは、通訳できる中国人スタッフがいっしょに行ってくれた。予想どおりといえばそうだが、行員は冷たく不親切だった。なんだか、どちらがお客さんかわからない感じだった。
 預金するため気をきかせて、円よりはドルのほうがよかれと思って持って行ったのだが、この支店ではできないと行員がいいだした。しかし、結局はできたので、行員が単に自分の仕事を増やしたくなかっただけだったのだろう。と、学校のスタッフもいっていた。
 まあ想定内だ。中国人は、とりあえずいってみる、ということをよくする。学生もときどきその手を使う。
 さて、お金の引き出しはATMで事足りる。でも銀行内の機械で操作していると、いつのまにか警備員がピタリと背後に張り付いていることもしばしばだ。暗証番号をまちがえて、やり直しになったときなどは、身を乗り出してくるので冷や汗もんだ。
 いつのまにかこそこそしている自分が情けない。誤認で逮捕されてもつい、おらがやっただ、といってしまいそうである。
 ひるがえって、日本の銀行はどうか。接客態度こそ丁寧だが、どこかマニュアル的で人間味が感じられない。ローンの窓口では、慇懃無礼といってもいいくらいだ。
 結局は同じようなものだと思う。金融機関のサガというか、来客をまったく信用していないあのシステムにはどうもなじめない。
 たぶん中国銀行のあの窓口のお姉さん(おばさんか?)も、仕事の帰りに寄ったスーパーで釣り銭を放って渡されるのだ。……あれ? これっていじめの連鎖? いやいや、彼らは何も感じていない。それがあたりまえだから。
 でも僕は、それらの機関で働いている人々をとくべつ嫌っているわけではない。そのことは大急ぎで付け加えておこうと思う。(^_^;
(photo:前回にひきつづき「南音」の舞台)