日本は魅力的か?

 中国人学生が日本語を学ぶ動機は変わってきている。ということを以前書いた。
 中国の学校では、第一外国語はやはり英語である。大学でも英語は人気である。だから、定員からはじき出されて、やむなく日本語などの他言語を勉強する学生も少なくない。
 それでもまだ日本語の需要はある。アジアで最初に成功した先進国である、という理由は依然大きいが、近いということも大きなアドバンテージになっている。
 留学する場合でも、アクセスに便利で治安がいい日本の魅力はまだ捨てたものではない。でもこのところ円高傾向がつづいているので、やはり多少余裕のある家庭の学生でないと苦しいだろう。
 僕が働いている日本語学校の学生に日本の魅力をきくと、アニメや工業製品などの定番的なこたえのほかに、最近では、治安、環境、水、風景、自由などをあげる学生も目立ってきた。
 中国社会が裕福になるにつれて、モノへのあこがれから少しづつ自然や伝統、文化など、心の欲求を満たすほうへとシフトしてきているような気がする。
 毎日のように、テレビでNHKワールドを観ていると、感じることがある。まあ端的にいえば、日本はこんなにもきれいでやさしく、穏和な国だったのか、と。
 そういうことを再発見するのである。もっとも、チャンネルの性格上、郷愁をさそうような番組も少なくないが、自分の日本人としてのDNAはやはり日本から抜けだすことはできないのだろう。
 日本にいると、けっしてこの国も住みやすくて安心な国ではない、ということは感じる。若者たちは希望もなく、不安をかかえてようやく生きている。中高年は、たとえお金があっても老後の不安をぬぐいさることができなくて、日々眉をしかめて生活している。
 僕が今生活しているこのS市を歩くと、裏通りでは人々は昼間から花札や麻雀に興じたりしている。けっして貯金などしていない人たちだろうな、と思う。
 中国人とは、漢字という共通理解のツールがあるが、あるとき授業で黒板に「貯金」と書いたら、学生からそれは何? ときかれた。中国語でも貯金に相当することばはあるが、日本人のイメージとは少しちがうようである。(^-^)/
(photp:伝統芸能「南音」の役者)