日本語学校の夜はふける

 日本語学校の学生の90%は寮生活である。そのため、放課後から夜9時まで、自習のために教室が開放されている。
 僕も夜ときどき、担当のクラスを見まわりに行く。習得のおそい学生をサポートしたり、質問を受けたりするためだ。しかし、それがどうも連中の巧妙なワナにはまってしまうのだ。質問しながら会話するのはとても勉強になるが……
 「先生は中国語を勉強しましたか?」→「少し勉強しましたよ」
 「どのくらいしましたか?」→「あ、あぁ、2年ぐらいかな」
 「先生は中国語が下手です」→(グサ)
 基本文型どうりな文である。見事。……しかしなぁ、「下手です」は自分に使ってもいいが、人にはあまり使ってはいけないと教えただろうが。だいたいキミたちみたいに、毎日毎日ま〜いにち、一日中勉強してきたわけではないのだ。……いばることでもないが。
 「先生の奥さんは何歳ですか?」
 もちろん、ちゃんとした基本形である。でも、クラス30数名のうち80%が女子だから、すぐさまこんな質問が出てくる。
 「先生、子どもはいますか」
 聞かれるままに具体的に答えると、我が娘のことは一切無視。息子のことになると目がキラリとひかり、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。年頃だからしかたがないが。
 親元から離れてのきゅうくつな寮生活。オッサン教師は、格好なからかいの対象らしい。
 多少のさみしさがあるからかもしれないが、よくいっしょに晩ご飯を食べに行こう、とさそわれる。公平感を欠くといけないので、できるだけ理由をつけて応じないようにしている。
 で、連中も考えたのか、「みんなで行きませんか?」という。うっかり「あぁ、いいよ」と答えると、「じゃあ、S先生もいっしょに」という。あん? そっちかい。S先生というのは若い同僚の男の先生だ。即座に却下した。
 中国は、10月1日から7日まで、国慶節の連休である。学生たちも全員自宅に帰る。しばらくは学校もひと休みだ。(^_-)
(photo:スローガン文化健在。イスラム寺院にて)