貴州をめぐる邂逅

 貴陽という町を知ったのは、たしか5年ほど前だったろうか。ボランティアで日本語をおしえていた僕は、そこで貴陽出身の女性と会ったのだ。
 彼女は、日本人と結婚して子どもも産まれ日本に住んでいたので、流ちょうな日本語を話した。雑談のあいまに彼女は、少し遠い目をして、「貴陽に喫茶店をひらくのが夢なんです」といった。
 それが妙に印象的だった。しかし、貴陽。どこにあるのだろう。どんな町だろうか。
 さっそく家で、帝国書院版『最新基本地図』をひらいた。地図フェチは、きっかけがあるとすぐさま地図をひらくのである。
 中国は貴州省。その省都が貴陽(グイヤン)であった。しかし、貴州省という省があったのか。そのときはじめてその地名も知った。
 ボランティア教師として、多くの中国人と接してきたが、貴州省出身者とはめったに会わなかった。それは、中国国内の格差をそのまま反映していたのかもしれない。貴州省は、いってみれば、ずっとおくれた省に位置していた。
 ところが、僕が中国へ赴任する直前までおしえていた学習者も、貴州省出身だった。もの静かな彼は優秀な技術者で、授業のあいまによく貴州の話しをしてくれた。
 そして、この日本語学校で出会ったのが、くだんの「貴州の3人娘」(7月27日付記事参照)である。
 貴州にとくべつなシンパシーを感じているわけではないが、落とし文のように、妙に印象に残るところで出会うのだ。
 当初は、ふしぎな物体だった彼女たちだが、今ではかなり日本語でコミュニケーションがとれるようになった。タマネギの外皮ぐらいはむけたような感じだろうか。そう、徐々に解明されてきた。
 生まれも育ちも恵水。おお、ずいぶんステキな地名ではないか。さっそく中国でも、帝国書院版『2010 最新基本地図』をひらいた。……発見。貴陽の南50kmぐらいに位置する小さな町だ。
 ホイシュイ。田舎娘(失礼か)の素朴さを感じさせる彼女たちが育った町の名は、僕の空っぽ頭にストンと落ちた。(^^)
(photo:日本では見られない学生の軍事教程)