普通体でいこう

 僕は学生には、できるだけ自然体で接したいと思っている。
 学生は友だちには、できるだけ普通体で接してほしいと思っている。
 「普通体」とは、日本語文法でいういわゆる “友だち言葉” のことである。「です/ます」調の「丁寧体」にたいして、親しい間柄での言葉使いのことをいう。たとえば「今日はヒマです」は丁寧体。「今日はヒマ(だ)」は普通体。
 先日、その普通体をおしえていた。いろいろなシーンを設定した絵カードを用意した。たとえば、若い男と女が電話をしている場面。フキダシがあって、空欄になっている。そこに、学生はセリフを入れて会話をつくる。
 ところが、なかなかできないのである。おおざっぱにいえば、西洋人なら嬉々としておもしろい会話をつくってくれるのだが、どうも東洋人は苦手なようだ。いくつかの場面を提示したが要領をえず、消化試合のように最後の場面を出した。
 それは、公園をカップルが腕を組んで歩いているシーン。とつぜんG君が食いついた。
 「ホテルへ行かない?」
 教室が盛りあがったのはいうまでもないが、女子の手前、鎮火につとめるほかはなかった。あらためて今度はH君にふると、
 「ホテルはどう?」
 もうホテルからはなれようよ、と思うが、血気さかんな若者にとって、その方面のネタは洋の東西を問わないようだ。だいたい、いきなりそのセリフはないだろう。中国ではOKなのか?
 「先生、Hは名詞ですか?」と、別のあるとき質問された。
 「Hは名詞じゃありません。Hな人、Hな男、Hだね……という使い方をしますから〈な形容詞〉です。」と、僕は答えた。(な形容詞=国文法でいう形容動詞のこと)
 まじめに答える自分が可笑しくなった。
 そんなこんなの授業がつづくのである。それがふつうたい、と博多弁でシャレてみたくもなる今日このごろでございます。(-。-;)
(photo:どんな会話をしているのかな?)