崇武なる古城…この暑さじゃねぇ

 バスのクーラーで少し寒くなってきたところでの、この暑さだ。
 うんざりだろ? これから歩くのは。といわんばかりの、バイクタクシーからの客引き攻勢にあった。
 S市から北東に約1時間。小さな半島が東シナ海にするどく突きだしている。そこには崇武古城という城塞都市がある。
 バス停から歩いても10分ぐらいだろうか。僕はバイクタクシーをふり切って、炎天下の道を歩きはじめた。まもなくこの町の繁華街は途切れ、漁港に出た。
 磯の香りという芳しいものではなく、腐臭のまじった粘っこい臭いが鼻につく。小さな漁船が、いく艘も繋留されている。なかには、浸水し沈みかけている船もある。
 港からはなれ、さらに高台へとあがる道をいくと、古城の入場ゲートがあらわれた。汗がしたたり落ちた。
 この崇武古城は、明の時代、倭寇の襲撃から守るために築かれたものだ。完全なかたちで残っているのはこの崇武だけで、平均7mの高さの花崗岩壁が、旧市内をぐるりと取り囲んでいる。全長約2450m。機能的につくられたその構造は高い評価をうけているときく。
 25元はらって入場ゲートをくぐると、古城の南壁に出る。しかし、城内にはいるわけではない。城内は人々の生活圏なのである。
 南壁から外は、海までなだらかな斜面になっており、そこが公園として整備されている。そこに入場するわけだが、城壁の南門(24日のブログ写真参照)からは、チケットを見せれば地元の人のなかにはいっていくことはできる。
 たくさんの中国人観光客もやってきてはいるが、ふしぎなことに、彼らの多くは古城など見向きもせずに、公園でくつろぎ海岸で遊んでいる。そして、あちらこちらに点在して置かれている、人や動物の石像のまえで写真を撮っている。
 そんな人々を尻目に城内にはいると、そこはやはりひと味ちがう空気がただよう別世界だった。ちょうど昼どきということもあり、家のまえで食べている人を何人も見かけた。せまい路地なので、わるいわるい、すまんすまんとつぶやきながら通りすぎる。
 それにしても、この得体の知れない濃厚な生活臭はすごい。息をするとその空気がお腹にたまり、さっきまでの空腹感が、いつのまにか霧散しまった。(*_*)
(photo:上:城壁の突端と烽火台/下:古城の眼前は東シナ海