日本語の青春

 今日、夏期クラスのCさんが、学校を去っていった。
 ちょっと斜にかまえたオタクっぽいところがあって、教室ではいつもブスッとしていた。なかなか笑顔を見せないが、たまに興味のある話題になると、その仏頂面からは想像できないような表情になる。まさに中国娘。
 彼女は、F建省南方の中堅都市、Z市の大学にかよっている。アニメを勉強しているという。夢は、日本で経験をつんでクリエイターになること、だそうである。
 だから、夏休みを利用して、この日本語学校へやってきた。けなげではないか。
 あまり口数が多くない彼女は、午後教員室にやってきて、大学へ帰るためあいさつをしていった。もちろん仏頂面はしまってあったけれど。
 最近では、中国の若者が日本語をまなぶ動機も少しづつ変化している。日本経済の低迷と、見とおしのない先行きで、日本企業の魅力もなきに等しくなっている。もちろんそれは、受け皿としての日本企業の側にも問題はあるのだが、そういった背景から、若者のムードもかわってきているときく。
 そして、相対的に浮上してきた動機が、アニメやマンガ、ポップカルチャーサブカルチャーから日本に興味をもつようになる若者の台頭である。
 どちらかというと、この学校へ入学してくる若者にしても、そっち方面からのアプローチがふえてきているようだ。だから、Cさんのようにはっきりした目的はもっていないが、もっと日本語を理解して興味のハバをひろげたい。できれば、日本へ行ってみたい。その先は……まだはっきりしない。
 そんな若者たちである。しかし学生は、日本語づけの毎日をしんぼう強くこなしつづける。比較的裕福な家庭の子たちが多く、しかもほとんど一人っ子なのだが、大陸的な根性はやはりあなどれない。
 ほとんどの学生が、校舎隣接の寮生活のため、校内はいつも若い体臭で充満している。今はとくに暑いから、むせかえるようである。ちゃんと洗濯しているのかい?
 まあ、青春ですな。夕陽に向かって走るんだろうな。おじさんは老後に向かって走っている。訂正。歩いている。息切れするから。(+_;)
(photo:崇武古城城内。次回はこの古城のことを)