8月に考える
この時期は、マスコミからのそういう報道が多くなるせいかもしれないが、戦争関係の本に手がのびてしまう。
今年はちょっと手に入れることができないので、去年読んだ本を紹介してみようと思う。うへ〜と思われるかもしれないが、読んでけっして損はない。
まず最初は『地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相―』(飯田進 著/新潮新書/2008年)である。
日本軍の兵士だった著者は、ニューギニア戦線に赴く。そこで待っていたのは、連合軍との戦闘ではなく、飢えと病気だった。
みずかららBC級戦犯として戦後裁かれた著者があきらかにした、日本軍のずさんな作戦と、戦わずして犬死にしていった同僚たち。平和ボケした僕などの空っぽあたまには想像もつかない世界だ。
戦争のおろかさを知るには絶好の一冊である。
もう一冊は『あの戦争から遠くはなれて』(城戸久枝 著/情報センター出版局/2007年)を紹介しよう。
著者の父は中国残留孤児だった。父の半生を知りたくなった著者は、みずから中国に留学し、父の足跡をたずねる。
肉親という対象でありながら客観的な視点を失うことなく、中国と日本のあいだに揺れうごく父の姿を鮮明に描きだしたこの若いライターの筆致はすばらしい。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのもうなずける。
ひとむかし前、マスコミをにぎわせた中国残留孤児。ひとつの、戦争の犠牲者といえる人たちかもしれないが、それにしても、ついさっきまで敵国だった国の子どもたちを育てあげる、中国人の懐のふかさには感嘆してしまう。もちろん、残されたすべての子どもたちがそうでなかったにしても。
この本のタイトルから、亡くなった小田実の名著『ベトナムから遠く離れて』(講談社/1991年)を思いだしてしまった。
僕は日本から遠くはなれてなにをしているのだろうか? ぢっと手を見る……あっ、運命線が乱れている。(+_;)
(photo:樹上の木陰で。でも、暑くない?)