にびいろの朝

 朝は心地よい鳥のさえずりで目がさめる。すがすがしい朝だ。あくびのひとつもしながら窓をあけると、向かいのマンションの若妻と目があった。一瞬ほほえんだように見えたのは、錯覚か。でも、今日いちにちステキな時間をすごせそうだ。
 そんな朝を一度でもむかえたいものだ。
 寝苦しい夜との格闘に疲れ、ようやく明け方うとうとしたと思ったら、宿舎下の小さな市場で肉をぶつ切る暴力的な音と、客をよぶ商売人たちの声のボリュームで目がさめる。
 蚊取り線香でいぶされた部屋の空気をいれかえようと思って窓をあけようものなら、朝から元気いっぱいの熱い大気がえんりょなくなだれ込む。
 だいたい、鉄格子が入った窓はあけるのもひと苦労だ。まるで囚人である。防犯対策なのはわかるが、火事にでもなったらおとなしく観念しろということか。そして、となりのマンションではいい争う声。若妻どころではない。
 これが僕の基本的な “すがすがしい朝” なのである。
 まあしかし、それはそれで了としよう。理想はいつか叶うはずだ(ムリか)。
 朝はテキトーに何か口にして出勤する。たいがい、パンかカップ粥である。粥はさすがに本場だけあって、カップタイプのものがいろいろスーパーに並んでいる。日本人には少しきつい味つけの製品が多いけれど、かんたんで楽だからよく買ってくる。
 そして、欠かせないのがバナナである。これがまためちゃ安いのでありがたい。日本の安売りバナナなど超高級品に思えるような値段だ。そんなバナナの、少し青いやつを買ってきて部屋に2〜3日放置しておくと、じつにいい甘みがでる。ビタミン、ミネラルが豊富で繊維もたくさんふくんでいるので、夏をのりきる鍵はこれだ。と、ひそかに思っている。ただし、あの黒光りするこざかしい連中には気をつけないといけない。
 朝は、外の小さな食堂で粥をすすったり、あつあつの万頭を買ったりする人も多いが、今は暑いので僕は内食である。もう少し涼しくなったらDebutしようと思っている。(^^)/
(photo:カップルに季節はかんけいない)