帽子文化考

 「帽子をかぶっている人は、たいてい日本人だよ」
 中国人の友人がそんなことをいう。
 ここS市でも、帽子屋は商売として成り立たないだろう。街で見かける帽子をかぶっている人は、女性が少し。男性ではバイクのヘルメット姿以外皆無である。
 今日はひさしぶりの青空なので日差しも強く、帽子をかぶって出かけようかと思ったが、やめにした。ほんとうは、晩秋の気配ただよう頭髪を紫外線からまもりたかったのに。小心の虫に負けた。
 かように中国人は帽子をかぶらない。しかし、日本人の帽子好きは有名らしい。若い人はそうでもないが、男女とわず中高年の帽子着用率はかなり高いと思われる。
 たとえば、日本では帽子をかぶって車を運転している人をかなり見かける。どういうわけか、彼らはおしなべて安全運転だ。なにか因果関係や法則があるのだろうか。ぜひ文化人類学専攻の学生に卒論として取りあげて調査してもらいたい。
 世界の人々の帽子着用について検証したことはないが、おそらくその国の文化のどこか深いところで、「帽子文化」が発達する国としない国にわかれるのにちがいない。
 そういえば、日本人と中国人(と、ひとくくりにはできないがとりあえず)は、顔や体型は似ているが、国民性はまったくちがう。東シナ海に深い海溝がよこたわっているのだろう。
 いやまてよ。いぜん香港の繁華街を歩いていると、店の客引きのことばが、僕がまえを通ると瞬間日本語にかわった。香港では帽子男もちらほらいたハズだが。やはり原因は、僕のマヌケ顔か。
 日本語学校は今、卒業式が終わって、日本でいう夏の補習授業のようなものをやっている。
 僕は、7月1日からはじまる、夏期集中コースの入門者を担当する。しかし、日本経済の先行きの暗さを反映してなのか、応募者が少ないらしい。
 ところで、ここの暑さ、11月ごろまでつづくという。やはり明日から帽子をかぶろうと思う。赤い帽子なら大丈夫だろうか。色でまた悩む小心の虫。(-。-;)
(photo:漢方薬局のまえの通りにて)