ロードバイク求めて三千里(1)

 ぼくは何かをはじめるとき、まずはその方面の本を読んだり、道具から入ったりするほうである。そしてはじめてみて少しわかってくるころに、欲が出てくるのである。
 しかしその欲求を満たすことによって、さらに進化するか失敗するかは、実行してみないとわからない面もある。
 悩んだら前へーー。それは、ぼくの基本方針である。悩んでも前へ行けないこともある。いや、そもそも前へ行くことが不可能なことでは悩まない。
 ーーロードバイクが欲しくなった。あの、ハンドルがドロップしたタイプの自転車だ。
 クロスバイクは持っている。乗りやすいし、安いチャリだがそれほど不満に思ったことはない。いや、今でも不満はない。それは、高価な自転車に乗ったことがないからかもしれない。
 あえぎながら走っているとき、「シャーッ」(という音がするような気がする)と追い抜いていくのは、たいていロードバイクだ。
 もちろんそういう作りになっていることは知っている。一方、クロスバイククロスバイクの良さがある。愛着のある「一張羅」ではあるが、しだいに欲が芽生えてくるのは、自然な成り行きと思いたい。
 そう思うようになるというのは、その方面の知識や能力が身に付いてきて、もう少し前へ行きたいという向上心からだろう(と、都合のいい解釈をする)。
 ある経験が欲求の火に油をそそいだ。長い登りの坂道を足をパンパンにしながら走っているとき、後ろからやってきたロードバイクにいとも簡単に追い抜かれたのだ。
 恨めしげに、遠ざかる乗り手の背中を見やると、ずいぶんな肥満体型だった。ロードバイクが細く見え、今にもぐにゃりと曲がりそうな気がした。ーーショックだった。
 ロードバイクがスーパーチャリではないことはわかっている。乗り手の実力しだいである。
 まあそんなわけで、「新車」を発注してしまった。自転車一台を買うのに、ここまで「いい訳」してしまう自分の小心さにもあきれる。
 しかし自転車を買うこと以前に、自分に合った自転車屋選びが、これほどめんどうだとは思わなかった。(つづく)(@_@;)
(photo:神戸にて)