抜歯に耐え抜糸を待つ

 トシとともに、暑さ寒さに対する許容範囲がずいぶんせまくなってきて、すぐさま「音を上げる」ようになった。
 この時期は、したがって毎日音を上げてばかりいるわけだが、この「音を上げる」ということばを辞書でひくと「弱音を吐く/降参する」とあった。
 まったく、ちょ〜ネガティブである。これはもうダメ人間ではないか。
 しかし悪いことばかりではない。こう暑いとビールがうまいのである。これはちょ〜ポジティブではないか(ちがうか)。
 ところが、先週親知らずを抜いたので、そのビールが飲めないのだ。拷問である。いったい何を楽しみに生きていけばいいんだ、とさえ思う。
 最後の親知らずだった。現役バリバリで活躍してきたのだが、去年の冬からおかしくなってきた。根っ子が炎症して一度は治療したのだが、どうも歯周病の影響で完治には到らず、すぐさま再発したのである。
 かかりつけの歯科医は、親知らずを押さえつけながら、「上下の動揺(ぐらつき)がありますから、骨が溶けていますね。抜いたほうがいいですね」といった。
 ぼくは大きな口を開けた状態で、「ほ〜えふか(そうですか)」といった。
 覚悟していたので気持ちの動揺はなかったが、抜歯手術と縫合、抜糸までのプロセスを考えると憂鬱になった。とにかく巨大な親知らずだったから……。
 最近は、というかぼくの歯の場合かもしれないが、麻酔注射をする麻酔を「塗られ」た。
 それで、しばらくすると歯茎が痺れてきたが、麻酔注射はやはり痛かった。
 抜歯そのものは、患部で何か作業をしていることはわかったが、ガリッとかゴリッとか音がしたかと思うと、あとは洗ったり拭いたりなどの感触が伝わってくるぐらいだった。縫合作業はあまり気持ちいいものではなかったけれど……。
 しかし、抜歯前にX線撮影された。また被爆した。手前の歯に異常はないことがわかったけれど……。(;。;)
(photo:黒部峡谷欅平、奥鐘橋)