厄年の厄災

 母なる地球、とはいうが、そんな万物の母がいつもやさしいとは限らない。たとえば、キスなどしようものならとんだしっぺ返しを食う。
 昨日は、中年自転車隊の例会だった。いつものメンバーで、「キャニオンロード」という山間の自転車道をのんびり走っていた。
 このコースのほとんどは、かつて敷設されていた私鉄電車の軌道跡を利用したものなので、急勾配もなく登りもゆるやかに無理なく走ることができる。
 山でもそうだが、事故は下山時のなんでもないところで起こる。
 昨日は、数日前からの寒気の影響で不安定な天候が予想されたので、ヘルメットの代わりに雨対策として防水のキャップをかぶって出かけた。
 公道を走るときは必ずヘルメットを着用するが、キャニオンロードはほとんどの区間が自転車専用道なので、車との接触は一部の箇所を除いて考えにくい。そして、帽子が事故の引き金になった。
 片道約20kmの復路を5kmくらい下ってきたとき、向かい風にあおられて帽子が飛ばされそうになった。
 とっさに左手で頭を押さえた瞬間、僕はバランスを崩した。と同時に自転車から投げ出され、瞬時に顔を大地に打ち付けた。
 何ごとが起きたのか理解できなかったが、ゆっくり身を起こしてアスファルトの地面に座り込んだ。
 メガネがないことに気づき周りを見渡したが見つからず、あきらめて、痛みでなかば感覚がマヒしている左ほおから口、あごのあたりに手を触れるとべったり血がついた。
 後から走ってきた仲間に助けられ応急手当をしてもらったが、どうも目の下を切っているので、医者に見せたほうがよさそうだった。
 身体のあちこちも歪んだようで、左肩の腱か靱帯が損傷しているような感じだし、そのほか打撲やひどい擦り傷が手足に数カ所あった。
 なんとか家に帰り、こんなサプライズを家人にしたくはなかったが、出血や左手の痛みもあり運転が不安だったので、医者につれて行ってもらった。
 結局、目の下は縫い、ほおから下にかけては傷の処置でおおわれ、世間に顔向けできない容貌になってしまった。
 昨日は調子がよかった。そんなときこそ危ない、ということをまた身をもって知った。
 帽子に替えたことや、いつも携帯する救急セットを忘れていったこと。そんなことも事故の伏線となっていたのだろう。
 しかし、母なる大地はあまりにも非情だった。(; ;)
(photo:ハマヒルガオ。徳光海岸にて)