70年の信用

 パリで起きた「テロ」事件は遠いヨーロッパの出来事とはいえ、とても他人事とは思えなかった。
 「イスラム国」と関係しているのかどうか定かではないが、「イスラム国」という怪物を生んだ因縁が欧米にあることは確かである。
 気が遠くなるほど歴史をさかのぼって、絡み合った糸を一本一本ほぐすことは至難の技だろう。しかしこれほどまでこじれ、人々が視野狭窄に陥ると、待っているのはファシズムである。
 ヨーロッパがそうかんたんに歴史のネジを巻き戻すとは思えないが、民主主義や平和というのは実際脆いものだと思う。
 我が国も例外ではない。もともと民主主義が機能していたのかどうか疑わしいが、それでも現憲法のもと70年間戦争をしなかったことは誇っていい。
 ところがここへきてそれも疑わしくなってきた。
 今や「特定秘密保護法」が施行され、国民の知る権利が奪われ、我々の知らないところで政権がどんな悪だくみをしてもわからないようになってしまった。
 アベシンゾーたちは沖縄や東北を見捨て、教育や福祉の予算を削り、着々と戦争ができる体制に持っていこうとしている。
 たった4分の1の国民が支持しただけなのに、国民の付託をうけたと強弁する彼らのやっていることは、じつに危なっかしい。
 パリの事件に際してある市民は、事件を起こした者は過激派でありけっしてイスラム教徒を敵視してはいけない、と報道のインタビューに答えていた。
 冷静な意見である。もちろんそんな人々ばかりではなく、物事を単純に考える人々も少なくない。
 日本でも同じことである。反中、嫌韓ヘイトスピーチに、自分の頭で考えもせずにダークサイドな勢力に加担していると、いずれパリのような事件が起きるだろう。
 70年で築きあげた信用は重いものだと思う。今はまだ「一応平和」ではあるがーー。( -_-)
(photo:プラハの街。2012年)