お客様は「人間」

 コンビニで買い物をする。店員にお金を払って、ときにはおつりをもらうときがある。
 店員は僕の手のひらにおつりを握らせるときに、もう一方の手を僕の手の下5cmくらいの位置に、手の平を上にしてすっとあてがうのである。
 おそらくそれは、おつりの小銭などがあやまって客の手から落ちるようなときにそなえて、セーフティネットのような意味でする行為なのだろう。
 客を丁重にあつかうていねいな接客マナーのようだが、いささか過剰ではないだろうか。
 店員が妙齢の女性で、そのまま僕の手をそっと包んでくれるようならうれしいが、マニュアル語しか話さない茶髪のねえちゃんやバイトのあんちゃんじゃあ手を引っ込めたくなる。おつりはもらいたいがーー。
 あれは日本限定の「サービス」だろう。しかし、国によってはトラブルになるかもしれない。中国のように、おつりを投げてよこしたり、放ってよこしたりするのも困るが、慣れればそれはそれですっきりしている。
 「お客様は神様」とよくいわれるが、本来その考え方は、客との上下関係を前提にしているものではないだろう。客に服従するのではなく、あくまで対等な人間として客にサービスをする、という思想なのではないか。
 もうひとつ僕たちの大きな誤解に、「サービス」イコール「タダ」という考え方がある。もともとの英語に「タダ」という意味はない。
 これら、客に媚びたりへつらったり、客を助長させたりする誤った思想が、接客の世界を歪めているのではないかと思う。
 ところが世の中には、逆に傲慢な接客を嬉々として受け入れる土壌もある。ーー僕には理解できない。(¨;)
(photo:金沢市大野にて)