ある音声学的考察

 「きゃりーぱみゅぱみゅ」には困っている。
 ーー発音できないのである。できなくてもいいんだが、なんだかその挑戦的なネーミングに屈するようでちょっとくやしいのだ。
 どうしていえないのか。前半の「きゃりー」は問題ないが、後半の「ぱみゅぱみゅ」がくせ者である。
 まず「ぱみゅぱみゅ」は、音声学的には「ぱ」が両唇破裂音、「みゅ」が両唇鼻音である。両唇音は口の動きが激しく、「ぱ・みゅ」とつづくと、まず口を開放破裂させて、それから鼻に空気を抜かなくてはいけないので、けっこう高度な作業になる。
 しかも「きゃりー」の「り」は歯茎弾き音なので、発音するときは舌の先を歯茎の裏側につけなければいけない。したがって、「り」から「ぱみゅ」に移行するときの口はとても忙しい。
 それでも、「り・ぱ」ならワリと容易に発音できるものの、そのうしろに「みゅ」がくっついているせいで、「ぱ」のときに口のなかで「みゅ」を発音する準備をするのである。
 準備をしないと間に合わないのだが、そのせいで混乱する。しかも「ぱみゅ・ぱみゅ」と重ね形なので混乱は極みに達する。それで、「きゃりーぴゃむぴゃむ」になったり「きゃりーぱみぱみ」になったりするのである。
 まあ、いえなくても日常生活に支障をきたすわけではない。たぶんアベちゃんよりマシだと思う。おそらく彼は、「きゃりー」でウッとつまって一瞬口をもぞもぞさせて、はき出すように「ぱにゅぱにゅ」というハズである(確証はないが)。
 だいたいこんな発音しにくい名前にしなくてもいいだろう。「きゃりーぱむぱむ」や「きゃりーぱにぱに」ではだめなのか。ちゅうじょうにょにひょんじんははちゅおんしにきゅいはじゅ(通常の日本人は発音しにくいはず)。
 ーーなどと、拗音幼児語化していると口が尖ってしまった。尖らせた口先は、アベちゃんに向けよう。(^_^;
(photo:バクタプルにて)