フィンランド語という壁

 英語はたいがい通じるが、現地の人々の日常会話はフィンランド語である。まあ、さっぱりわからない。街のあらゆる表記もフィンランド語だ。併記があっても、おそらくあれはスウェーデン語だ。
 フィンランド語はウラル語族だから、英語とは言語のグループが根本のところからちがう。したがって、解読する手がかりがないのである。
 ときどき英語併記もあるが……日本にやってくる外国人の気持ちがよくわかる。
 フィンランドの人口は約530万。ちょうど兵庫県の人口と同じぐらいである。しかし、国土は日本より少しせまい程度なので、ずいぶんゆったりしている。
 ヘルシンキにはだいたい60万ぐらいの人が住んでいるが、街は静かで清潔である。
 昼間が長いので、夕方になるとホテル近くの広大なシベリウス公園では、たくさんの人が湖のまわりをぐるぐるジョギングする。もっとも、日没がおそいのでいつが夕方なのかわからない、という疑問もある。
 人々は短い夏をできるだけ外ですごし、少しでも陽にあたろうとしているように見える。そういう目的のせいかわからないが、帽子をかぶっている人はあまり見かけない。スキンヘッドの人も無防備のままだ。
 しかしここは物価が高い。あらゆるものが日本と同じぐらいか、ものによってはさらに高い。現在の円高ユーロ安の為替状況でもそう感じてしまう。
 ついつい買い物を手控えてぶらぶら歩いていると、物乞いの姿をよく見かける。社会福祉がととのった北欧のイメージからすると意外だったが、失業率も7〜8%と高いようである。
 もっとも、今のヨーロッパ全体がそんな状況で、フィンランドがとくべつ高いわけではない。余談だが、日本だって統計の取りかたによってはヨーロッパ並の失業率ではないのだろうか。
 もうひとつ気になるのは、街行く人の手持ち煙草である。公共の場でも喫煙率が高いように感じられる。日本より喫煙者に寛容なのだろうか。個人主義が発達しているから、日本のようにヒステリックに分煙しないだけなのだろうか。
 ヘルシンキの街はコンパクトで、歩いてまわってもちょうどよいサイズである。トラムという市電も路線が充実していて利用しやすく、気ままな散策には欠かせない。(^_^;)
(photo:上はヘルシンキ市内。下は市内を走るトラム)