「受話器頭」男の欲求不満

 「俺の家ではもう 女房がヤキモチ もやしはじめてるらしい」
 森進一の歌で有名な『襟裳岬』ーー。思わずこの替え歌を思い出してしまった。
 にわかにクローズアップされた、その襟裳岬の上空をミサイルが飛んでいったそうだ。「上空」といってもほとんど「はるか」上空らしく、失敗しない限り問題ないレベルだ。
 しかし問題はその「失敗」にあって、そういう事態を想定して日本はうろたえ、慌てふためいているようである。
 頑丈な建物に避難しろ! 逃げろ! といわれても、どこへ逃げればいいのかわからないし、ミサイルをものともしない頑丈な建物など日本国中どこにもない。
 政府はしまいには、防空壕を掘れといい出しかねないし、竹槍を用意しろ、なんていう下知をとばすかもしれない。
 脅威や不安を煽る政府、ニュースになるからことさらおおげさに報道するメディア……いっしょになって踊ってはいけない。
 北の「受話器頭」の男はアメリカに向かって、「オレを男と認めろ!」「オレはここにいるぞ!」と叫んでいる。じつは、日本など眼中にない。
 そもそも彼が、我が国を攻撃する理由がない。ただ、アメリカの承認を得て、身の安全を図ろうと必死なのである。
 怖いのはあの男より、アメリカといっしょになって事を起こしたい(と思っている)我が国のトップである。もしそういう事態になれば、大魔神(古いね)がギロリとにらむように、「受話器頭」の男は米軍基地のある日本列島を見渡すだろう。
 そいう最悪のシナリオを避けるために、ぼくたちは過剰反応しないようにしたい。
 国民が激高、興奮すればするほど、“丁寧に説明する” ことが得意な我が国のトップを喜ばせることになる。被害を受けるのはアメリカではなく、日本や韓国である。
 しかし、たまに飛ぶミサイルより、毎日日本列島を飛び回るオスプレイのほうがよっぽど怖い。こちらのほうこそアラートを出してほしい。(-_-;)
(photo:夜市。台北