新世界は身近に存在する

 「食わず嫌い」を克服すると、世界が広がることはたしかである。食べ物に限らない。仕事、趣味、嗜好、異性……女性? う〜ん、これはまたべつの問題をはらんでいるなぁ。
 ネガティブな世界に踏み込むのはいかがかと思うが、「食って」みて新たな視界がひらけるのはすばらしい。
 ジブリ最後の作品(になるかもしれない)といわれている『思い出のマーニー』(米林宏昌監督/2014年)は、思わぬ拾いものだった。
 というと制作した人に失礼かもしれないが、ジブリ宮崎駿という巨匠のイメージが強くて、どうしてもそういうフィルターを通してとらえてしまう。
 『思い出のマーニー』は宮崎作品とはちがうテイストだが、通底にはやはりジブリの思想が流れている。しかし、ジブリでありながら、宮崎ジブリとはちょっとちがう。
 これはこれでありなのだ、と思った。ネタばれになるのでこれ以上はいわないが、「食って」みて正解だった。
 もともとアニメ映画の世界には関心がなかった。画面が大きいテレビマンガ、という認識以上ではなかったのである。
 トシのはなれた弟を連れて見にいった『アルプスの少女ハイジ』(お目当ては同時上映の別のアニメだったが、何だったかは忘れた)に涙したこともあったけれど、アニメ映画に目覚めることはなかった。
 『風の谷のナウシカ』(宮崎駿監督/1984年)、『天空の城ラピュタ』(宮崎駿監督/1986年)が話題になろうとも興味がなかった。
 しかし、『となりのトトロ』(宮崎駿監督/1988年)で状況は一変した。
 正直にいえば、「参りました」というところだろうか。アニメをあなどっていた自分を恥じた。と同時に、扉を開いてよかったな、という思いもした。
 あの手塚治虫がもっとも恐れていた同業者が、宮崎駿である。やはり並みの才能ではなかったのである。
 まあ、早くに「食わず嫌い」を克服してよかった。(^^)
(photo:北アルプス、鏡平にて。2013年)